投票参加は自動的に自分自身や社会の利益になるわけではない
加藤 言人(明治大学 政治経済学部 講師) 政治への関心が低い人や投票に行かない人は、社会の一員としてけしからんと、やり玉に挙げられがちです。たとえば若者の話になると、「最近の若者は…」とひとくくりにされることが多いように感じます。女性の政治家が少ない背景についても、「女性は政治に興味がないから…」とまとめてしまうような主張を見かけます。しかし論理立てて考えてみれば、政治関心や投票率を高めることが、政治や選挙に対する万能な処方箋であるとは必ずしも言い切れないことがわかってきます。
◇若者の投票率は、絶対的な値ではなく、相対的な値で見る必要がある 「日本で若者の投票率が低下している」というのは、マスコミなどを通じてよく耳に入る言説です。この「低下している」という言葉は、多くの場合、若年層の絶対的な投票率を指して使われることが多いでしょう。しかし、若年層の意見は政策にどれくらい影響力があるかという視点で考えるならば、大事なのは、他の年齢層と比べた相対的な若者の投票率です。若者の絶対的な投票率が低くなっても、他の年齢層の投票率も低くなっていれば、若年層の票が選挙結果に対して持つ影響力は必ずしも低くなりませんし、逆に絶対的な投票率が高くなっても、他の年齢層の投票率がさらに高くなっていれば、選挙結果に対する影響力が低下する可能性もあるからです。 この点を頭に入れて、図1を見てみましょう。この図はOECD諸国の2021年時点で直近の国政選挙における年齢層ごとの投票率を示しています。世論調査の結果に基づいて算出されているため正確な値ではありませんが、確かに若年層(22-29歳)の絶対的投票率は日本が図に含まれる国の中で一番低く、同じくらい低い国は他にラトビアくらいしかありません。一方で、若年層と高年齢層(50歳以上)の投票率差に注目すると、これも日本は一番大きい部類に入るのですが、オーストラリア、カナダ、フランス、エストニアも、日本とほぼ同じサイズ、30%くらいの差があることがわかります。これらの国は、若年層の絶対的な投票率は日本より高いのですが、それに増して高年齢層の投票率も高いため、相対的な若年層の影響力は日本とほぼ変わらなくなっている訳です。 この点を頭に入れて、図1を見てみましょう。この図はOECD諸国の2021年時点で直近の国政選挙における年齢層ごとの投票率を示しています。世論調査の結果に基づいて算出されているため正確な値ではありませんが、確かに若年層(22-29歳)の絶対的投票率は日本が図に含まれる国の中で一番低く、同じくらい低い国は他にラトビアくらいしかありません。一方で、若年層と高年齢層(50歳以上)の投票率差に注目すると、これも日本は一番大きい部類に入るのですが、オーストラリア、カナダ、フランス、エストニアも、日本とほぼ同じサイズ、30%くらいの差があることがわかります。これらの国は、若年層の絶対的な投票率は日本より高いのですが、それに増して高年齢層の投票率も高いため、相対的な若年層の影響力は日本とほぼ変わらなくなっている訳です。