「プラスチック」ファンなど客層変化に賛否、国際化で「本場」の雰囲気が薄れる懸念も 【プレミアリーグ 巨大ビジネスの誕生⑩)】
両チームの名前や日付が入った記念品で、今やほとんどの試合会場の周辺で売られている。サポーターが応援するチームのマフラーを着用して忠誠を示す昔からの伝統に反し、両チームカラーが半々で対戦カードが書かれた土産物は「邪道」だとして、専門誌FourFourTwoのアンケートでは否定的な意見が9割以上を占めた。 客層の変化がもたらす功罪はさまざまで賛否も分かれる。任意団体アーセナル・サポーターズ・トラストの幹部、ティム・ペイトン氏(51)は40年前からシーズンチケットで観戦し続けるコアな部類のファンだが、新規層の流入にも理解を示す。「エミレーツ・スタジアムのホスピタリティー席は全体の15%ほどだが、入場料収入の約4割を占めるため一般チケット料金を抑える一助になっている。そして観光客といっても、例えば日本から訪れるファンにとっては一生に一度のイベントかもしれない。そういう人であれば、私のように1400試合ぐらい見ているファンよりも熱く応援して雰囲気を盛り上げてくれるかもしれない」とメリットを挙げる。
アーセナルの宿敵トットナムのホームゲームには、毎試合のように多くの韓国人が集結する。お目当てはリーグを代表するスターの一人で、韓国代表の英雄でもある孫興民だ。6万2850人を収容する大規模なスタジアムでロンドンという場所柄、韓国人に限らず多くの観光客が観戦に訪れる。 クラブが来季のシーズンチケットを6%値上げした方針は、長年の常連客よりこうした「一見さん」を優先しているのが一因と批判された。この論調に対し、オーストラリア出身のポステコグルー監督は「フェアではない。自分も地球の反対側から来たので『プラスチック』で『ツーリスト』の一人と言えるだろう。このクラブは地元だけでなく世界中にサポーターがいるので、そういう人たちも受け入れる度量を持つべき」と反論した。 ▽本場の雰囲気が薄れるリスク ただし国際化を意識しすぎれば、地元ファンはないがしろにされていると感じることになる。ペイトン氏は「国際的なクラブになるのは素晴らしいことだが、ちょうどいいバランスというのは難しい。例えば外国のテレビ中継の時間を考慮して日程やキックオフ時刻が変更されれば、スタジアムに通うサポーターがしわ寄せを受ける。あるいは外国のファンを受け入れすぎて、昔からのファンがチケットを入手できなくなったら本末転倒だろう」とジレンマを口にする。