Ⅳ期、転移性去勢抵抗性前立腺がん 治療目標は「上手に付き合う」 がん電話相談から
がん患者や家族の悩みに答える「がん電話相談」。今回は、Ⅳ期の前立腺がんを患う80代男性の今後の治療法について、がん研有明病院の泌尿器科化学療法担当部長、湯浅健医師が答えます。 --令和4年6月、頻尿で泌尿器科を受診したところ、前立腺肥大症と診断。内服薬を処方されましたが、翌月、腫瘍マーカーのPSA(前立腺特異抗原)値を測ったところ500と高く、前立腺がんと肺転移が分かりました。 「がん細胞が前立腺からリンパ液や血液の流れにより別の臓器に転移した場合、転移性去勢抵抗性前立腺がんといい、相談者は該当します。最初はどのような治療を行ったのですか」 --ホルモン療法です。皮下注射のLH-RHアゴニスト製剤(商品名リュープリン)を月1回。同時にアビラテロン(ザイティガ)、エンザルタミド(イクスタンジ)を服用しました。 「ホルモン療法は転移がんの第一選択となる治療法です。他の治療は?」 --昨年10月から抗がん剤ドセタキセル(タキソテール)を6サイクル行い、今年3月からは抗がん剤カバジタキセル(ジェブタナ)を始めましたが、7月に40台だったPSA値が8月に100近くに上昇。効果がないということで5サイクルで中止しました。 「以降の治療は?」 --半年に1回のLH-RHアゴニスト製剤の注射だけです。担当医から、今後の治療法はないと言われています。 「転移のある去勢抵抗性前立腺がんに対して承認されている薬剤は、ホルモン剤としてアビラテロン、エンザルタミドの2剤、抗がん剤としてはドセタキセルとカバジタキセルの2剤です。去勢抵抗性前立腺がんでは、当初のホルモン療法が途中から効かなくなります。2次ホルモン療法として別のホルモン剤などが使われ、その後、抗がん剤による化学療法というのが通常の流れです。恐らく担当医はこの4剤を使ったので、次の治療法はないと言ったのだと思います」 --他に治療法はないのでしょうか? 「一般論として説明すれば、骨転移のみであれば放射性医薬品の塩化ラジウム(Ra)─223による治療があります。また保険適用のゲノム医療もあります。ゲノムとは遺伝情報のことです。ゲノム解析により、がんで生じた遺伝子異常を把握できるようになったため、変異に応じた薬剤が使えるようになりました。BRCA遺伝子変異がある人には、がん細胞が必要とするポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の働きを抑えるPARP阻害剤の、オラパリブ(リムパーザ)とタラゾパリブトシル(ターゼナ)が使えます。MSI検査で遺伝子変異が見つかれば、免疫療法が適用になります」