青山敏弘が現役最後のホーム戦でゴール「みんなで喜べたのが僕の幸せ」…東方からもリスペクト
広島の夜空に青山敏弘の名前が響いた。今シーズン限りで現役を引退する紫の6番が最後のホームゲームで逆転への狼煙を上げる同点ゴール。スタジアムが歓喜に沸いた。 【ゴール動画】広島の“バンディエラ”青山敏弘がホーム最終戦でゴール!J1逆転優勝へ弾みつける サンフレッチェ広島は5日、AFCチャンピオンズリーグ2のグループステージ第6節で東方(香港)と対戦し、4-1で逆転勝利を収めた。青山は現役最後のホームゲームでキャプテンマークを巻いて先発出場した。ピッチを縦横無尽に駆け回り、鮮やかなロングパスや鋭いスルーパスでチャンスを作って躍動。最後まで青山らしい高いクオリティを示した。 「積極的に前にいけたし、連続した動きもできていた。何よりゴールにつながるようなパスも出せた。それをみなさんの前で見せられたので誇らしいゲームになりました」 広島は前半の立ち上がりに失点したが、「そこからみんなで1歩も引かずにゴールを狙い続けた。そういう姿勢が絶対にゴールにつながると思っていた」という青山がホームに大歓声を巻き起こした。 1点を追う36分、DF志知孝明の強烈なミドルシュートが相手GKにセーブされると、ゴール前でポジションを取り続けていた青山がいち早くこぼれ球に反応。冷静に押し込んでゴールネットを揺らし、広島最後のホームゲームで新スタジアム初得点を決めた。 「ゴールを決められると、自分が1番信じていました。みなさんも期待してくれていたと思うけど、自分が1番信じていた。今日は自分を褒めてあげたいし、みんなで広島最後の試合を喜べたのが僕の幸せです」 得点後は両腕で力強いガッツポーズを見せてベンチメンバーのもとに飛び込んだ。青山は、「あれだけ喜んでくれるファン・サポーターとチームメイトがいて、やっぱり期待に応えたかった。僕だけの気持ちだとゴールは取れないし、みんなに取らせてもらった」と感謝の気持ちを口にした。 青山の得点で勢いづいた広島は後半にFWゴンサロ・パシエンシア、MF中島洋太朗、FWピエロス・ソティリウが得点を決めて4-1の勝利。84分までプレーした青山は広島最後のホームゲームで輝きを放ち、大きな歓声と拍手の中でピッチを後にした。 「みなさんに応援していただいて、支えられて今がある。それに応えるためにプレーしてきたことがみなさんに伝わったと思うので、いい広島での最後を迎えられて幸せでした」 広島のレジェンドがピッチを去るときには、東方の選手も労うように握手を求め、試合後には一緒に写真撮影もしていた。その1人である24歳のスコットランド出身DFカラム・ホールは試合後に青山への敬意をこう話した。 「広島のインスタグラムを見たら、これが彼の最後のホームゲームになると知ったんだ。それで彼について少し調べてみて、日本のレジェンドだとわかった。彼のような選手を高く評価するのは当然のことだ。僕にできることは、日本のサッカーに貢献した彼に感謝を伝えて、今後の成功を祈ることだからね。彼とプレーできて光栄だし、幸運を祈っている」 東方はすでにグループ敗退が決まっていたが、ロベルト・ロサダ監督は前日会見で「アジアトップの日本での試合で何を見せられるかが大事だ」とコメント。試合の序盤には18歳FWウー・ユーシーが鋭い突破から豪快なシュートを決めて先制に成功し、広島に勝ち越されたあとも最後まで戦い抜いた。 右ウイングバックでフル出場したホールは、「広島のスタメンがどんなメンバーであろうと、トップクオリティであることは試合前からわかっていた。僕らは先制点を奪っていいスタートを切ったけど、常に相手に立ち向かい、試合のどの瞬間も集中していないと、広島のようなチームが相手だとすぐにやられてしまう。前半に1点を返されて、後半から彼らがギアを上げてとても速いプレーをしてきた。僕らには疲れが出てきたけど、彼らのクオリティは素晴らしかった。こうなると予想はしていたけど、僕らはベストを尽くしたし、香港のプライドを示せたと思う」と試合を振り返った。 雨が降る平日夜に9694人が集まった新スタジアムでプレーしたホールは、「広島のファンは試合中ずっと歌い止まなかった。こんな応援とファンの毎試合にかける情熱は日本サッカーの功績だろう。香港でもこのような雰囲気で、もっと多くのファンがいてくれたらと思う。スタジアムはとても美しいし、とても近代的で新しい。サッカーをするには素晴らしい場所だ」と称えた。 東方からのリスペクトもあったホームゲームで紫の6番は有終の美を飾った。ただ、広島は3日後に敵地で明治安田J1リーグ最終節のガンバ大阪戦が待っている。優勝がかかった大一番に向けて、青山は「自分もクラブもこういう時に力を発揮できると思っているので、きっと大丈夫。僕はそれを実現できる。それだけのことはやってきたと思うので、自信を持って大阪に行って戦って、シャーレ持って帰りたい」と力強く語った。 取材・文=湊昂大
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