変わったのは我々ではなく世界――『進撃の巨人』主題歌で、海外で再生された日本のアーティスト5位、Linked Horizonが見た変化 #なぜ話題
原作漫画の累計発行部数は1.2億部以上。世界中で社会現象を巻き起こした『進撃の巨人』が、2021年の原作完結に続き、アニメも「The Final Season 完結編(後編)」(11月5日NHK総合で放送)をもって完結した。『進撃の巨人』に、Season 1から主題歌を提供したLinked Horizonは、OPテーマ「紅蓮の弓矢」で2013年の「第64回NHK紅白歌合戦」に出場。さらに、Season 2 OPテーマ「心臓を捧げよ!」は2021年にSpotifyで1億回再生を突破するなど、『進撃の巨人』とともに大躍進を遂げた。世界中で愛される日本のアニメとアニソンを取り巻く状況は、Linked Horizonを主宰するサウンドクリエーター、Revoの目にはどう映っているのか。(取材・文:冨田明宏/写真提供:ポニーキャニオン/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
紅白出場で世間が手のひらを返した
「海外にも届いているんだなというのは、YouTubeのコメント欄からも感じますね。日本語だけではなく、英語やスペイン語、アラビア語などでも書き込みがありますから。本当に世界中で愛されている作品なんだなって。僕が主題歌を担当したのは4年ぶりなのですが、久しぶりに帰ってきたら以前よりも世界的にウェルカムなムードになっているようにも感じましたね」 「心臓を捧げよ!」はSpotifyで2021年に「海外で再生された日本の音楽ランキング」において5位、さらにLinked Horizonも同年「海外で最も再生された日本のアーティスト」の5位にランクインすることになった。 「(『進撃の巨人』主題歌の)ヒットには、自信をもらえました。自分なりにアニメの作品性や芸術性にもこだわりながら作りたいものを詰め込んで作ってきたわけですが、商売として音楽活動をしている以上、やっぱり売れなくてはダメですから。『自分のやり方は間違っていなかったんだな』と思わせてくれました。それまではマニアックな音楽作品を作っている自負もあったので、『世間からは見向きもされていないな』という意識もありましたからね。今は時間も経っているので、最初に『紅蓮の弓矢』がヒットしてくれたことに対して感謝の気持ちしかないんですけど、2013年に『紅白歌合戦』の出場とかもう決まった頃だったかな、世間がクルッと手のひらを返したときは『え!?』と思ったのはなんとなく覚えています(笑)。全然恨み言とかではないんですけどね。一時の癖が強過ぎる変な曲という扱いが、今ではもうすっかり作品性や物語性を体現する名曲みたいな扱いになってますからね。むしろ手のひらを返すって、素晴らしいことだと言いたいです。それは自分になかった価値観を受け入れるということかもしれないし、多様性の時代の嚆矢でもありますよね。大衆に浸透しうるということは、これもポップミュージックのフィールドに入れてもいいという、消費者として音楽文化を支えるみなさん、ひとりひとりの意識のアップデートじゃないかと思います。おかげで僕は10年後も『進撃の巨人』に関われていますから。手のひらを返す勇気、大事です」