変わったのは我々ではなく世界――『進撃の巨人』主題歌で、海外で再生された日本のアーティスト5位、Linked Horizonが見た変化 #なぜ話題
海外に向けて日本語で歌うことに障害は感じない
BTSやBLACKPINKといったK-POPアーティストの世界的な成功に対して、J-POPはこれまで海外では受け入れられないと言われてきた。その理由は長らく言語の壁だと言われており、英語が苦手な日本人が日本語で生み出したポップスでは聞き手を限定してしまうと言われてきた。しかし、Linked Horizonの楽曲が日本以外の国でも再生されていることは、前述のSpotifyのランキングからも明らかだ。アニメとアニソンは、言語の壁を突破できたのだろうか。 「僕個人としては、日本語で歌うことの障害って感じたことがないんです。もし『60億人に音楽を届けなさい』と言われれば言語や文化の壁について考えなくてはならないけど、『進撃の巨人』を見ている人々に向けた音楽である場合は考える必要がないので。向こうから曲の意味を理解しようとしてくれますから。そしてその『進撃の巨人』を見ている人々が分厚いリスナー層を形成しているので、僕の場合は障害だと感じたことがないのだと思います。そもそも僕がやっている物語音楽ユニット、Linked HorizonやSound Horizonって、親切でわかりやすいポップスバンドではないんです(笑)。『理解したいなら歩み寄ってきて、自分たちで考察して楽しんでくれ』という、ちょっと高飛車ともいえる方法で現在まで20年近くやってきたので。『ここをこう聴くと、こういう意味が隠されているんだよ』とか、自分たちで説明して『俺たちすごいだろ』みたいなことって、アーティストやクリエーターとして品がないと僕は思う。受け取り手を信じるべき。それをやるのは僕たちじゃなくて、受け取ったみなさんがやればいいことで、僕は『進撃の巨人』もそういう作品だと思っているんですよ。『そこに描かれているものがすべてです』って」 Linked Horizonをめぐる環境が変化しても、Revoが創作スタイルを変えることはないという。 「あえて偉そうな言い方をしますけど、『世界が勝手にアニメとアニソンに歩み寄ってきた』わけで、見られていることに気づいて急にやり方を変えたり、物作りの精神が変わってしまうのだとしたら、果たしてそれは世界が見たい日本のアニメや、聴きたいアニソンなのか、 と思いますね。日本の文化であるアニメやアニソンに対して深いところまで理解をしようという人々が増えたこと、今のこの状況に対しては心から感謝したいです。素晴らしいことですよ」 Revoの言葉からは、これから日本がポップカルチャーを世界に発信していく上で忘れてはならない重要な精神性が示されていた。 「あまり過度な日本上げもどうかと思うのですが。ただ、日本人ってどこかで『欧米はすごくて日本は遅れてる』みたいな考え方のもとで育ってきた人たちが多いと思うんです。本旨ではないので掘り下げませんが、敗戦国でもある。でも、日本には日本の素晴らしい文化があって、最先端の文化として世界に受け入れられているものもたくさんある。しかし、それは一朝一夕にして醸成されたものではなく、それこそ『鳥獣戯画』や葛飾北斎のような源泉がたくさんあるからです。そして、それは日本だけで完結するような話ではないんですよね、本来。あの天才ドビュッシーやモネが東洋文化の影響を受けた話は有名ですが、その彼らの影響を受けたさらに先の時代に僕たちはいる。すべてはいま突然はじまったものではなく、時代を超えてそれぞれの時代に国内外から影響を受けて生まれる新しい文化、それらはどこかで繋がっていると思います。それが今は、アニメやアニソンなのかもしれない。これがまた未来の何かへと繋がります。そのことに僕たちは、正しく敬意と愛と誇りを持つべきだと思います」