起源は“お守り”? 実は奥深い「ネクタイ」文化 日本に持ち込んだのは幕末の土佐半出身の有名人か
「クールビズ」を環境省が提唱し始めたのが2005年、来年で20年を迎えることになります。近年、夏の暑さが激しくなってきたこともあり“ノーネクタイ・上着なし”というスタイルはすっかり定着。しかし、一方では真夏でも「スーツ&ネクタイ」にこだわる人も。ただ、そこで疑問なのがそもそもネクタイというものはなぜ存在するか……ということ。そこで、1935年創業のネクタイメーカー・成和株式会社(東京都千代田区)に取材しました。 【写真】日本に初めてネクタイを持ち込んだとされる「幕末の有名人」 ☆☆☆☆ 成和によると、“魅せるため”に首飾りをする慣習はかなり古くからあったそうで、「古代エジプト王朝の墓には、首飾りを巻いた人々の姿が描かれています。紀元前からエジプトでは、王朝の設立より古くから高度な織物技術を持ち、位の高い人物は首飾りなどを付けていたと考えられています」とのこと。 時は進み、ネクタイの起源とされる「クラヴァット」が誕生したのは17世紀のフランス。 「国王ルイ14世が組織したクロアチアの騎兵隊兵士達が、妻子や恋人たちからお守りとして贈られた布を首に巻いていました。それを見たルイ14世は興味を示し、レースや刺繍を施した布を巻くというスタイルを自国に取り入れ、王族や貴族などの上流社会に流行していきました。これがネクタイの起源と言われる『クラヴァット』であり、この言葉自体は『クロアチア人』を意味する『クロアト』に由来しています」(成和) 現在でもフランスでは日本でいうネクタイを「クラヴァット」と呼ぶそうで、ギリシャでは「グラヴァッタ」スペインでは「コルバータ」、イタリアでは「クラヴァッタ」など微妙に発音は変わるものの、元の「クラヴァット」に近い発音で呼ぶ国はヨーロッパを中心として多いようです。 「19世紀後半には、イギリスでクラバットの結び目のみを残したボウ(蝶ネクタイ)が作られたり、現在の主流となるネクタイと同じ形であるフォア・イン・ハンド・タイが生まれるなどしてネクタイは正装になっていきました」(成和) ネクタイが日本に持ち込まれたのは18世紀。ジョン万次郎の帰国とともに渡来したと言われているのだとか。これ以降、海外から洋装が日本に持ち込まれ始めたのをきっかけに、ネクタイは政治や軍服にも取り入れられるように。1884年には日本で初めてネクタイが作られました。 ☆☆☆☆ 「多様性を尊重する現代において、季節に関係なくビジネスの場でもネクタイは『面倒くさい』『締めたくない』という意見も多く聞くようになってきました」と成和。その上で「これまでのようにTPOに合わせてネクタイを締める文化は残しつつも、もっと自由なファッションとしてビジネスの場に限らず楽しめるよう、ネクタイの活躍する場を増やすため世の中に働きかけていきたいと考えています」と語っていました。 (取材・文=宮田智也)
ラジオ関西