「誕生日をこんな風に祝ってもらったことはなかった」若者はなぜ〝九州のトー横〟に集うのか 夜の街で支援活動に同行して分かった「居場所」の大切さ
▽「妊娠したけど親に言えない」深刻なSOS 公園に集まる若者には大人に不信感を持つ子も多いが、藤野さんが通い初めて約1年、顔なじみも増えた。連絡先を交換したのは50~60人。取材中も電話が鳴り、その場で相談が始まることもあった。 「お金がなくて万引する友達を助けて」 「妊娠したけど親に言えない」 深刻なSOSも多く、警察や病院へ付き添ったり、児童相談所などにつないだりすることもある。藤野さんは現在の活動を「応急処置的」と話す。ノウハウのある団体や医師、弁護士など専門家との関係構築や連携を心がけているが、どの機関につなぐのが適切か、どこまで支援できるか、手探りが続く。 当初の活動資金は持ち出しだったが、現在は企業が設立した福祉財団などの助成金と寄付でまかなっている。安定的な支援を続けるため、立ち上げていた団体を今年5月にNPO法人化した。アウトリーチ事業にはスタッフ2人も加わった。
「生きづらさを感じている子たちに、1人じゃないと実感してほしい。この子たちが生きていくためには、助けてもらえたという経験が必要」と強調する藤野さん。彼らが困った時「頼ってもいい制度や大人がいる」と伝えることを目標にしている。 ▽必要なのは「未来を保障していくような支援」 筑紫女学園大(福岡県太宰府市)の大西良准教授(児童精神保健福祉学)は、約5年前から警固公園や福岡県内各地で若者へのアウトリーチを続けている。子どもや保護者のカウンセリングにも携わる。 夜の繁華街に集まるのは、家や学校に居場所を失うなどの経験をした子どもたちが、苦しみを理解してくれる人を求めているから、とみている。家に帰れなかったり、親から十分な保護を受けられなかったりすると、経済的に困窮し、生き延びるために犯罪に手を出すケースもある。窮地に陥った彼らを利用しようとする大人も存在する。「生きるか死ぬか究極の選択を迫られ、悪いと分かっていても犯罪に手を染めてしまっている」