【主将座談会】完山徹一×上村充哉×中村充「アスレのエンブレムを背負う以上、負けちゃいけない」それぞれが考えるキャプテン像と引き継がれる“アスレ・イズム”に迫る|Fリーグクラブ特集/立川アスレティックFC
立川アスレティックFCは今シーズン“キャプテン3人体制”で臨んでいる。 44歳で今もなお第一線でプレーを続ける“レジェンド”完山徹一、“キャプテン5年目”を迎える28歳の上村充哉、“キャプテンタイプじゃない”と語る26歳の中村充の3人だ。 【映像】新生・日本代表の意気込み(南雲颯太/立川アスレティックFC) クラブは2000年の創設から今年で24周年を迎え、Fリーグでも最古参に数えられるチームだ。府中→立川・府中→立川と移りゆくなかで、あらゆるものが変化してきた。 選手はもちろん、本拠地も、チームカラーも変え、今は立川に腰を据えて戦っている。元来、このクラブは“過度な馴れ合いがない”クラブとして突き進んできた。名古屋に匹敵するフィジカルを備える屈強な選手を軸に王者に挑む姿は、まさに孤高の存在だった。 一方、現在は、その“尖った”文脈からはやや丸みを帯びて、日常から和気あいあいとした雰囲気も増えた。人が変われば、チームも変わる。ただし、変わらないものもある──。 あえて一つ挙げるならば、それは「アスレ」の名だ。 3人のキャプテンの間には明確な役割や決まりはないものの、絶妙なバランスがある。なぜなら、三者三様の振る舞いながらも、根底に“アスレ・イズム”が流れているからだ。 毎年のように主軸や有望株が他クラブに“引き抜かれ”るなかで、クラブは文字通り“意地”で上位争いにくらいつき、目に見える成績を収めてきた。その「意地」とは「誇り」であり、他者を言い訳にしない孤高の姿──アスレ・イズムなのかもしれない。 今シーズンも、立ち返るものを意識した、そんなチームづくりのメッセージを感じる。激しくもあり、ゆるくもあり、でも芯はブレない。完山、上村、中村、それぞれが考える“キャプテン像”とはなにか。アスレはどんなチームを、目指しているのか。 取材=北健一郎 編集=本田好伸、伊藤千梅
「アスレにキャプテン気質の選手はいない」(上村)
──今シーズンは3人キャプテン体制です。それぞれどんな役回りですか? 完山 明確な立ち位置みたいなものはないと思っていました(笑)。 上村 ないですよね(笑)。立ち位置や役割分担について3人で話したこともありません。うちのチームは、そういうところはぬるっとしているので。 ──キャプテンに指名されたのは? 上村 プレシーズンの時にサバスから「キャプテンはテツさんと充の3人体制でやりたいと思っている」と伝えられました。僕はチームが始動してすぐでしたね。 中村 おそらく僕が最後だったと思います。サバスから「3人でやってほしい」って。充哉から事前に聞いてはいたので、やると決めていました。 ──完山選手は「意外だった」とのことですが。 完山 だってもう、ねえ。僕がやると思うわけないじゃないですか(笑)。 上村 いや、意外だとは思いませんでしたけどね。 ──中村選手は過去にキャプテンの経験は? 中村 U-20日本代表でキャプテンを務めました。あとは町田アスピランチ時代に副キャプテンを少しやっていました。僕はキャプテンという柄ではないので。 上村 僕も自分がそのタイプだとは思ってないですし、うちのチームにキャプテン気質の選手はいないんじゃないですか。だからぬるっとしているのかも(笑)。 ──チームをまとめていくうえで大事にしていることはありますか? 上村 チームの基準を下げないことは意識しています。お客さんからお金をもらってプレーしている以上、プロフェッショナルであるべきです。その姿勢は、僕がアスレに入団した当初のベテラン選手たちから学びました。そういった良い伝統を引き継ぎながら、 馴れ合いになることなく基準を下げないことを一番意識しています。 チームをきちんと締めないといけないし、そのためには言いたくないことも言わないといけない。そこはテツさんと充とバランスが取れていると思います。 完山 僕はあんまり考えていなくて、このまんまという感じ。みんながやりやすいように、チーム全体のことは見ないようなふりをして、見ています(笑)。 僕が意見するのは、大きなことがあった時くらい。イメージとしてはF1のセーフティーカーみたいな感じ。事故があった時に動く。それ以外はそんなに考えていません。 中村 テツさんは、厳しい姿を見せないですけど、これだけ長く競技をやってきているので、誰よりも負けず嫌いだと思います。プレー中の姿勢でそれはすごく感じるので、若手への刺激になっているはず。テツさんの経験値が伝わればいいなと思っています。 完山 言葉も大事にしているけど、バランスを見ながら言い過ぎないようにという感じですかね。 普段はあまりしゃべらないですし、逆にみんなを見て学んでいます。 上村 そうなんですか? 完山 みんなとは世代も違うし、年齢も離れているからね。プレーやピッチ外で、自分の考えと違うことはある。だから、その感覚が勉強になるというか。もちろん人として間違っていると思えば世代関係なく言うけど、そういう選手もいないかな。 あと、年齢は全く意識していない。だから今年で45歳になる今も選手をやっているんだろうけど(苦笑)。周りからすれば引退している年齢でもあるし、言葉と行動のミスマッチがあって「口だけじゃん」と思われるのは嫌なのであまりしゃべらない(笑)。 上村 そういう意味では、僕も年齢は気にしていないですね。そもそもピッチ外で仲が悪くても、ピッチ内で連係が取れていればいいと思っています。 完山 その言い方だと仲が悪いみたいじゃん(笑)。 上村 いやいや、悪くはないですけどね(笑)。だけど、僕らはただ仲が良ければいいだけのグループではないですし、勝たないといけないチームです。ピッチ外で必要以上に話さないから、気まずいといったこともないですね。 ──上村選手と中村選手はプレーでバチバチやり合っているイメージですが、練習中に言い合いになることも? 上村 僕は言いますけど、充はあまり言わないですね。基本的になんでも受け入れてくれるタイプだと思います。 僕はある程度の基準を保って、そのレベルを上げていくために、テツさん、(皆本)晃くん、若手、誰にでも関係なく言います。 充は逆に誰に対しても言わない。人によって言う、言わないを分ける人もいますが、テツさんも充もそういうことはしないタイプだから、リスペクトしています。 中村 僕があまり言わないのは、充哉が言ってくれるからです。簡単なミスに対して誰も言わなかったらさすがに言うと思いますが、充哉がきちんと締めてくれているので、自分まで言う必要はありません。 試合中も怒るタイプではないので、ミスが起きても「パスがズレているよ」くらい。例えばテツさんがミスしようが、充哉がミスしようが、自分がミスしようが、チームのミスなので、誰かが尻拭いすればいい。人に対して僕がとやかく言うことはしてこなかったですし、それぞれのキャラでうまいこと回っているんじゃないですかね。 ──キャプテンマークを巻く選手はどうやって決めているんですか? 上村 サバスが決めています。今日はお前がキャプテンだと。 中村 僕もサバスから、ロッカーで言われます。自分がキャプテンだと思っていなかった日に、会場に入ってから「今日、巻くから」と言われることもあります(笑)。 完山 俺は当日に言われることはないけどね。だいたい前日の練習後に言われるかな。言われなかったら今回は違うと思って安心して試合に臨めます(笑)。 ──そうなんですね(笑)。 完山 やっぱり、キャプテンじゃないほうが気は楽ですね。コイントスを忘れることなんかもあって、「あ、そうだ俺、今日キャプテンだった」って(笑)。