フランス流恋愛観のリアル。マクロン大統領が25歳年上の妻と結婚、恋愛の多様化はますます加速
マクロン夫妻は、自由な恋愛観の象徴的存在。
折しもそれは、フランスにおいてもMeTooの機運が高まり始めた時期と重なる。自由恋愛大国といっても、従来のそれはやはり「男性目線」「男性主導」の呪縛からなかなか自由になれないでいた。冒頭であげたボーヴォワールの「第二の性」から何十年という年月が流れたにもかかわらず、地位や富を得た中高年男性の多くが若い妻や恋人を連れ歩くことにはなんの疑問も抱かない一方で、年長の女性を「クーガー」と揶揄するような社会は、なかなか変われないでいたのだ。 自分の心と体に正直に。終わった愛とは潔く訣別し、希望を持って新たな愛に飛び込む。そんな彼らの大らかで毎回真剣勝負の恋愛への姿勢に、時に感心し、時にたじろいできた私だが、しかしその陰には暴力をも伴う支配や抑圧に苦しみ、潰される女性たちがたくさんいたのだ。そのことを、今の私たちは知っている。 思えば同性婚の合法化も、欧州他国に比べてフランスは決して早くはなかった(一番乗りのオランダが2001年なのに対し、フランスは2013年)。異性カップルの利用者が大きく上回るパックスも、もともとは婚姻できない同性カップルの法的保護を念頭に設営された制度だったのだ。恋愛大国でありながら、保守的な結婚観や家庭観、あるいは女性差別的な恋愛観という側面を根強く根深く併せ持つフランス。それを一つ、また一つ、軌道修正しながらようやく現在の恋愛観に到達した。その一角に、マクロン夫妻という象徴的なカップルを位置づけてみると、なかなかいい景色だな、と思えてくるのである。
PROFILE
長坂道子/ながさか・みちこ エッセイスト。1961年生まれ。著書に『パリ妄想食堂』、『50才からが“いよいよ”モテるらしい神話「フランス女」』など。現在はチューリッヒとパリの二拠点生活。note.com/0787089993
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