蒸気、木漏れ日、樹木が見通しを悪化。|長山先生の「危険予知」よもやま話 第25回
右カーブはショートカットしやすい!?
長山先生:まずカーブ走行時の特性として、左カーブでは道路の左端に沿って走行するのに対して、右カーブでは大回りするより、近い所からショートカットするような軌跡で走行しようとする傾向があります。 編集部:カーブをショートカットするのは、右カーブを走行する車に多い特徴なのですね。 長山先生:そのとおりです。特に貨物を満載した大型トラックの場合、カーブ走行時に直線に近い軌跡でショートカットする傾向があることを実際に観察して確かめたことがあります。 編集部:貨物を満載した大型トラックだけ観察したのですか? 長山先生:そうです。二輪車とダンプカーの事故原因の鑑定を依頼されたことがあって、S字カーブでダンプカーがショートカットをしたかどうかを調べたのです。現場の道路を俯瞰撮影して記録したものを分析したところ、土砂を積んでいない空車は車線に沿ってカーブを走行するのに対して、土砂を満載した実車の場合、例外なくS字カーブを車線に従わず、直線的に走行することが記録されました。 編集部:車体が重くなるとハンドル操作に対する車の挙動が鈍くなり、カーブに沿って走るのが難しくなるのですかね? 長山先生:それもありますが、車重が重くなって速度が出にくいので、より直線的に走行して速度低下を抑えたいという心理があったようです。また、当時のダンプカーにはパワーステアリングも付いてなかったので、車重が重くなるとそのぶんハンドルを切るのにより力が必要になるため、ドライバーはそれも嫌ったようです。 編集部:なるほど。ダンプカーと乗用車では車体の大きさや重量が異なりますが、カーブ走行時の傾向が同じなら、右カーブを走ってくる対向車がセンターラインをはみ出し、こちらの車線に入り込む可能性を考えておかなければいけませんね。 長山先生:そうです。対向車がはみ出せば、それを避けるため雪が残る左側に逃げなければならないので、こちらがスリップする危険性が生じます。早めに対向車のはみ出しを予測して、速度を十分落とすなどの対応が求められます。また、ショートカットする車が多いためか、対向車線の路肩にはまだ雪が残っていました。これが対向車のショートカットを助長させる原因になります。