蒸気、木漏れ日、樹木が見通しを悪化。|長山先生の「危険予知」よもやま話 第25回
2階建てのロンドンバスでスリップ体験!
編集部:滑りやすい路面は私もタイヤメーカーのテストコースなどで体験したことがありますが、海外で体験できるとは、羨ましいですね。 長山先生:茨城県ひたちなか市に「自動車安全運転センター 安全運転中央研修所」という施設があるのをご存知ですか? 編集部:毎年、白バイ隊員の競技会が開催される所ですよね。JAFのロードサービス隊員の研修を取材しに行ったことがあります。 長山先生:安全運転中央研修所は「自動車安全運転センター法」に基づき、警察や消防から自動車教習所、一般企業まで、車を仕事で使う企業向けに運転者や指導者の研修を行う施設として設立されたものです。広大な敷地にトレーニングコースやドライビング・シミュレーターを保有し、運転上の危険を安全に体験できる施設です。平成3年に開設されましたが、その数年前から基本構想委員会が設置されて、私もその一員として教育カリキュラムの作成やドライビング・シミュレーター等の検討のため、5回の海外視察に参りました。 編集部:5回も行かれたのですね。海外はヨーロッパですか? 安全運転教育や施設はドイツやイギリスが進んでいるような印象ですが。 長山先生:たしかにヨーロッパには自動車先進国が多く、昭和54(1979)年にはすでに欧州8か国にスキッドパンがあり、それぞれどのように作られていて、それを使ってどのような訓練が行われているのか体験しました。なかでも特に興味を持ったイギリスとスウェーデンでのスキッドパンでの実体験についてお話します。 編集部:北欧のスウェーデンは雪も多そうでスキッドパンによる訓練の必要性がよく分かりますが、イギリスもけっこう雪が降るのでしょうか。 長山先生:北欧に比べれば雪は降りませんが、緯度は北海道より上になるので、冬は冷え込むようです。そのため、ロンドンバスの訓練所では、摩擦係数の低い路面に水を撒き、その上を走行させてスキッド(滑り)を体験させる方式がとられていました。 編集部:ロンドンバスとは、あの有名な赤い2階建てバスのことですか!? 長山先生:そうです。ダブルデッキと呼ばれる、あの2階建てバスです。イギリスの道路は歩道に近づくほど低くなるように勾配が付けられているので、路面が凍結していると、停留所から発車する場合に滑ってしまいます。そこで、勾配のある滑りやすい路面で発進するための訓練などが行われていました。 編集部:日本のカマボコ型の道路と同じですね。路面の排水性を考慮して、路肩を低くしているのでしょうね。アクセルワークなどが重要になるのでしょうけど、どんな教え方をしているのか興味深いですね。 長山先生:おっしゃるとおり、私もとても興味を持ち、訓練をただ見学するだけでは満足できなかったので、スキッドパンでのバスの運転を体験させてもらいました。 編集部:実際にバスを運転したのですか!? 長山先生:そうです。スキッドパンでブレーキやハンドル操作の訓練を体験させてもらったのですが、ダブルデッキバスは二重のシフトレバーが付いていて、操作に慣れない私は速度を出すのに苦労しました。インストラクターから「もっと速度を出せ!」「思い切ってハンドル操作せよ!」「ダブルデッキバスは45度傾いても転覆しないから」と叱咤激励されましたが、何度やっても速度を充分出せないままブレーキの訓練は終わってしまいました。しかし、ダブルデッキバスをロンドンで運転できた日本人は何人もいないのではないかと、満足な気持ちを持ったものです。 編集部:そうですよね。今でこそ観光用の2階建てバスを都心などで見ることはありますけど、本場で実際に運転した人はまず居ないですよね。では、スウェーデンでも運転したのですね?