国立大学「もう限界です」財政難に授業料値上げの動き いま考える「大学教育の受益者は誰?」
山田進太郎D&I財団COOの石倉秀明氏は国立大学の意義について「元々、国立大学は『お金の心配をすることなく、学びたい人が高度な教育を受けることによって社会に還元していく役割のために国が運営する機関』であったはずだ。だが、今は国立と言いながら運営は大学が行い、交付金はあるが使い道も限られており、大学自身による稼ぎ方にも制限があるなど、制度自体が本末転倒になっているのでは」と指摘した上で、国立大学を一括りにして議論することの限界を指摘する 「例えば東京大学のような、首都圏にあって、ある意味でエリートを養成する機能と『誰でも学べる場としての国立』を分けて考えなければぼんやりした議論になってしまう」 運営費交付金の減額、光熱費などの経費の急騰によって厳しい状況にある大学経営について石倉氏は「光熱費・人件費の高騰はどの企業も向き合っている問題だ。いかに経営努力をしていくかという話と、質の高い授業・研究をしていくかという話は別物。大学の『外』から経営のプロを入れる方法もある」とする一方で、「国立大学の役目を考えると、完全に国が(費用を)出してもいいのではないか」と提言する。 「例えば、1人の子どもが生まれて、小中高大、全て公立に通った場合、学費の総額は生涯で1000万円程度だ。大学を卒業後、生涯で3000万円~4000万円ほど納税することを考えれば、1000万円投資して数十年後に3000万円返ってくるという“割りがいい投資”のようなもの。大学のための費用を国が負担したとしても、将来の自分たちに返ってくる『率』はとても高いのではないか」 そもそも大学経営は財務状況によってどのような点に違いが出るのだろうか? 石倉氏は「例えば学生が学術論文にアクセスできるようにするためにもお金はかかり、さらに研究費の助成、教授への待遇、どれだけの研究員を抱えるかなどの問題もあると思われるので、かなりお金はかかるだろう」と話す。