高さ40mから「SNS心中」も奇跡の生還 26歳女が法廷で語った恨みと生かされた意味
一連の出来事には〝空白の時間帯〟もあった。殺人未遂事件を起こした後、ともに自殺を図った女性とホテルで過ごしたのは数時間にわたる。市営住宅へ向かってから飛び降りるまでも約3時間かかっている。
この間、何があったのか。被告人質問で検察側が尋問したが、被告はXへの投稿も含めて、自殺幇助に関することは「覚えていない」と繰り返した。検察側は論告で「女性は自殺の決心ができていなかったのに、決意を固めさせた。巻き込んだ経緯はあまりに身勝手」と指弾した。
11月1日の判決公判。加藤陽裁判長は、殺人未遂事件の計画性を認め、「危険で悪質な行為」と非難。自殺幇助に関しても「主体的かつ積極的に本件犯行に関わった」と指摘し、「被告の反省が十分に深まっているとみることはできない」として、懲役5年6月(求刑懲役7年)を言い渡した。
判決に先立つ10月23日の論告求刑公判。最終意見陳述で被告は5分以上にわたって自身の思いを述べた。その大半が元交際相手への不満。互いにやめようと約束したマッチングアプリを元交際相手がスマートフォンに入れ直したことなどへの恨みを、取りとめもなく語った。最終意見陳述は一般的には一言や二言で終わることも多いだけに、裁判長が途中で「まだ続くのか」と確認する場面もあった。
被告人質問の中で、事件を担当した警察官が親身になってくれたとして「生かされたことに意味があると考えるようになり、死にたい気持ちはなくなった」と心境の変化を語っていた被告。最終意見陳述の中でも「犯した罪を償い、更生していきたい」とも述べたが、自殺に巻き込んだ女性への謝罪を口にすることはなかった。(倉持亮)