「そんな飛ぶ?」「何を投げても抑えられる気が…」大谷翔平にホームランを打たれた男たちの告白
打たれる気がしなかった
その大谷がプロ野球選手として初めてホームランを放ったのは、13年3月17日。千葉県鎌ケ谷市にある日本ハムの2軍球場で行われた中日とのオープン戦だった。対戦した山内壮馬さん(39)は、当時プロ6年目。その頃の大谷の印象についてこう回想する。 「正直、毎年騒がれる“怪物ルーキー”の1人としか思っていませんでした。線も細いし、打席に立っても威圧感は感じなかったし」
それまでの大谷の成績は8打数無安打。打たれる気がしなかったという。しかし、3回裏に回ってきた第2打席。外角に投げた直球が少し甘めに入った瞬間、ボールが宙に消えた。 「やられたというより、やっちゃったなと……」 山内さんがそう感想を漏らす特大弾の推定飛距離は130メートルほど。ライトスタンド後方に設置されたネットに突き刺さった。 「そんな飛ぶ?」 心の中で思わずそう呟いてしまったほどだ。
「全ての球で気を抜くことが出来ない」
同様の感想を口にするのは、大谷に合計3本のホームランを打たれた元オリックスの東(とう)明(めい)大貴さん(35)。NPBで最も大谷にホームランを打たれた男である。 「打たれた瞬間は(スタンドに)入らないだろうと思っていても、意外にポーンと伸びていくんですよね。彼は元々ホームランを打つ技術が高い上に、失投も見逃さない。だから投手は、全ての球で気を抜くことが出来ないんです」(東明さん) 前出の山内さんは、大谷のプロ初ホームランを許したその年の6月、公式戦で投げ合うことにもなった。 「ただ、その試合でも負けてしまい、悔しくてしばらくは引きずっていました」
悔しかったはずの思い出が“いい思い出”に
16年に引退して以降は冒頭で登場した石塚さん同様、大谷の活躍をチェックするのが欠かせなくなった。 「年々、体つきと同時に存在感も大きくなっていき、悔しかったはずの思い出が“いい思い出”に変わっていきました。大谷って、試合後のコメントひとつとっても性格の良さが滲み出ているじゃないですか。それで人として応援するようになったんです」(同前) これまで大谷との対決をあまり人には語って来なかった石塚さん。最近、野球を始めた小学2年生の息子に、大谷に打たれた映像を見せたという。 「そうしたら『お父さん凄い』とは言ってくれず、『大谷になりたい』と(笑)。あの頃は悔しかったけど、今となっては光栄なことですよ」(石塚さん) 大谷のホームランには、打たれた男たちすら魅了する力が宿っている。 ◆ ◆ ◆ 「 週刊文春電子版 」では、「 真美子夫人&デコピン新居購入 」「 懲りないフジテレビ 」など「大谷翔平3大秘話」を詳報している。 大谷翔平「6億円記念球」日本人社長2人が明かした「分刻みの入札デッドヒート」《終了2分前、「もしかしたら買えるかも」と思ったその時…》 へ続く
「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年11月7日号