倒産相次いだ「カプセルホテル」コロナ後の大変貌とは。徹底的な「持たない経営」でホテル事業の”弱点”を克服した「ナインアワーズ」に聞いた。
2つの事業全てにおいてコンセプトを体現し、ゲストの動線や顧客想定までを計算して設計することを強く意識しているという。 重ねて、一度デザインしたら、その在り方を守り続けるのもこだわりだ。たとえば施設デザインは、デザインチームが提案したものを原則変えない。自分たちが口を出すことはもちろん、オーナー会社からの変更意見も受け付けない。オーナーからは広告用の張り紙や冊子の設置などもよく頼まれるそうだが、それも絶対に承諾しないという。
その理由を渡邊氏は、「iPhoneにストラップを付けるとシンプルで美しい佇まいが壊れてしまうように、一度でも特例を作ると、全てが崩れる要因を作ってしまうからです」と説明する。それに、特例があるとルールも変えなければならず、運営もしにくくなる。変わらないことで、細部まで設計したデザインやオペレーションを守っているのだ。 ■「カプセルホテルの海外輸出」に意欲 今ナインアワーズブランドは、東京、大阪、愛知、福岡、宮城で13ホテルを展開している。うち1軒が女性専用、1軒が男性専用だ。企業全体としては、仮眠ができる24時間サウナ『ドシー』、カプセルホテルに大浴場とサウナをプラスした『カプセルプラス』、オペレーションのみを受託しているホテルを合わせて全25軒を運営。目標は2030年に国内100ホテル、海外で50ホテルを運営することだ。
海外出店はヨーロッパや北米、アジアで検討しており、直近では、スイスのジュネーブで計画が進んでいる。その後、ロンドン、パリ、アムステルダムにも出店予定だ。 喫緊の課題は、海外でカプセルホテルをどのようにデザインするのかだ。視察に訪れると、日本のカプセルの見た目だけを真似しているホテルはあれど、オペレーションなどがかなり杜撰だという。 しかし、日本の本物を単純に持っていくだけでいいのかというと、それも間違いかもしれない。過去には、カリフォルニアロールが爆発的に流行った事例もある。現地のパートナーと密接にコミュニケーションをとりながら、国によりカスタマイズをしていく必要があると見ている。また経営面では、2年後にグロース市場での上場準備も整えているそうだ。