倒産相次いだ「カプセルホテル」コロナ後の大変貌とは。徹底的な「持たない経営」でホテル事業の”弱点”を克服した「ナインアワーズ」に聞いた。
対象となる病は、不整脈、高血圧、ぜんそく、アルツハイマーほか、気が付かず放置していると危険なものばかり。不整脈については、すでに東京医科歯科大学と検出のための共同研究が始まっている。 その一方で、睡眠データの販売も行っている。販売先は、飲食メーカーやマットレスメーカー、製薬会社など、睡眠にアプローチする製品を開発している企業だ。依頼を受けて、企業が開発中の製品をゲストに試してもらい、被験者、非被験者の睡眠データを収集。その結果を納品している。
他方、健康関連企業や大学病院と協力し、異なるデータと睡眠ビッグデータを組み合わせる動きもある。結合するデータは、ウェアラブルデバイスで収集する活動データや食事データ、コンビニでの購買データ、大学病院のカルテデータなど。これらとつなぎ合わせることで価値を高め、より多くの研究開発に役立てようとしているのだ。 また、睡眠事業と宿泊事業の垣根を越えたビジネスも生まれつつある。たとえば大学病院からは、「宿泊して睡眠解析サービスを受け、疾病相当の人は大学病院で診療する」ためのホテルを作ってほしいと依頼が殺到しているという。2024年8月には、㈱NTTデータが品川に持つビル内にナインアワーズをオープンし、同社が計画するパーソナライズ・サービスにビッグデータが活用されることも決まっている。
こういった試みができるのは、空間が限られ、データを取得しやすい「カプセルホテル」だからだろう。 ■弱点を克服しようとして、「データ販売」にたどり着く なんともしたたかな印象を受けるナインアワーズだが、睡眠事業が誕生したのは、むしろ「ホテル事業ゆえの弱点を克服するため」であった。 少し歴史を遡ると、ナインアワーズは、2009年に創業者が京都にブランド1号店をオープン。その経営相談を経営コンサルティング企業㈱リヴァンプが受け、2013年に同社が分社する形で運営会社㈱ナインアワーズが誕生した。しかし、その際に懸案事項となったのが、宿泊業が経済の浮き沈みに非常に影響を受ける事業モデルであることだ。