3位決定戦でのニコラ・ヨキッチは『いつもの』活躍で『いつもの』トリプル・ダブル、セルビア代表に銅メダルをもたらす
ドイツの策を打ち破り、19得点12リバウンド11アシスト
物議を呼んだセミファイナルから気を取り直して、メダルを目指す3位決定戦は、昨年のワールドカップではファイナルで顔を合わせたドイツとセルビアの再戦となりました。 ワールドカップには出場しなかったニコラ・ヨキッチの存在が、試合にどれだけの影響を与えるのかが注目されましたが、世界最高のプレーヤーはやはり世界最高でした。 ポストで起点を作るヨキッチがパワープレーでドイツのインサイドを蹂躙し、カバーが来ればすかさずパスで展開するセルビアは、前半の2点シュートが64%と超高確率で着実に得点を重ねていきました。逆にドイツは今大会これまで2点シュートの成功率が3位と高確率で、インサイドで堅実に得点を重ねてきたのですが、ここを固めるセルビアのディフェンスを崩せず、3ポイントシュート一辺倒になって攻めあぐねました。 緩急を使ったドライブと高さのあるフィニッシュで、チーム最多の得点を記録していたフランツ・バグナーとスピードのあるデニス・シュルーダーのドライブ。ドイツの優れた武器を優先して封じ込めるセルビアの策は、ドイツがやりたいオフェンスをさせないだけでなく、ボールムーブを停滞させることにも繋がりました。 これに対してドイツは後半に大きく戦略を変更してきます。211cmのヨハネス・ボイトマンを外し、機動力のあるヨハネス・ティーマンを投入してチーム全体のスピードを上げ、ポストでボールを持つヨキッチには積極的にダブルチームを仕掛けました。 しかし、このダブルチームをヨキッチはビハインドバックのパス一発で崩します。試合を通して11アシストとチーム全体を動かしたヨキッチの働きにより、第3クォーター中盤には最大19点ものリードを生み出しました。 ドイツはシュルーダーをベンチに下げ、特定のハンドラーがボールを長く持たない形へとシフト。これでボールがテンポ良く繋がるようになり、アイザック・ボンガやモリッツ・バグナーの3ポイントシュートで9点差まで追い上げて第4クォーターを迎えます。ワールドカップMVPをここで外す勇気ある決断が、ドイツのチームとして戦うスタイルを復活させました。 セミファイナルでアメリカに大逆転を食らっているセルビアにとっては悪い予感しかしない展開となりましたが、ヨキッチはドイツのプレッシャーディフェンスの裏へパスを通して速攻を生み出せば、スローダウンでたっぷり時間を使ってから個人技のパワープレーでゴール下で加点。ラスト3分半では得点を奪えませんでしたが、露骨な時間稼ぎも織り混ぜながら時計を進める試合巧者ぶりで、93-83と無事にリードを守りきりました。 メダルの懸かった試合でも、普段と同じように19得点12リバウンド11アシストのトリプル・ダブルを達成したヨキッチは、普段と同じように世界最高のプレーヤーでした。そしてチームの総合力では上回っていたはずのドイツが、ヨキッチに対抗する策を講じることばかりに気を取られ、自分たちの強みを十分に出せなかった一戦でもありました。