セブンが外資に買収されれば「買い物難民」が続出する…「9兆円対抗策」を経済界が固唾をのんで見守るワケ
■「巨額MBO」は日本企業を変えるのか 米大統領選挙でトランプ氏が圧勝し、トランプ政権では規制緩和などによって企業買収が増えるとの見方が高まっている。 米国企業が特定分野でのシェア拡大のため、わが国の企業を買収のターゲットにするケースや、米国の企業がわが国の企業と合弁企業を設立することで、米国内での製造技術向上を目指す事例も増えるとみられる。 アクティビストと呼ばれる投資家は、株価が割安に放置されている企業に敵対的買収を仕掛けたり、他の企業との経営統合を求めたりするだろう。AIなど先端分野の成長期待の高まりから、新興企業による買収、あるいはIT先端分野などで非中核事業を分離する(スピンオフ)企業も増えるだろう。 その結果、物言う株主との対立解消、構造改革の加速などを目的にMBOを実行し、非上場化を選択する日本企業も増えるかもしれない。わが国の企業にとり、経営者の高齢化などを背景とした後継者問題も深刻だ。 ■経済全体が活性化するチャンスである 日本企業が意思決定の独立性・迅速性を高め、社会の公器として長期存続を目指すためM&A戦略の重要性は高まるはずだ。持ち合い株の売却が進み株式市場の流動性が増し、多様な見解が株価に反映されることもM&Aの増加につながるだろう。 今回、セブンが9兆円規模のMBOを、多くの利害関係者の協力をとりつけて実現できるかは注目に値する。そのプロセスは、買収の当事者や資金調達などを支える金融機関、法的な助言を行う弁護士事務所など、多くの関係者にとって重要な事例になるからだ。 今回の発表を機に、MBOを実行して持続的に収益を獲得する日本企業が増えるかもしれない。その結果、経済全体の効率性向上につながることを期待したい。今回のMBO案件には注目すべきだ。 ---------- 真壁 昭夫(まかべ・あきお) 多摩大学特別招聘教授 1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授、法政大学院教授などを経て、2022年から現職。 ----------
多摩大学特別招聘教授 真壁 昭夫