「老化、いらっしゃい」と受け入れてみる。南野陽子が語る“ポジティブな歳の重ね方”
「いい感じで歳取ってる!」流れに身を任せてポジティブな人生を
――南野さんは「今の自分と10代の時の自分は別」とはっきりおっしゃっているのが印象的です。 南野陽子: だって、別物じゃないですか(笑)。ファンの皆さんにとっては、ヨーヨーを持っている頃の私が真っ先に思い浮かぶかもしれませんが、「私もあなたと同じように歳を取っているんですよ」というのは言っておかないと、って思っています。制服を着る仕事のオファーをいただく時も、私としてはいやいや皆さんを幻滅させるだけだからって(笑)。 ――現在は女優として活躍の場を広げている一方、一度は遠ざかった歌手活動も継続していらっしゃいますよね。 南野陽子: 2016年の30周年記念コンサートの際に「アイドルとして歌うのはこれが最後」と言った時の気持ちは、今も一緒なんです。女優としていろいろな役をやりつつ、この年齢でセーラー服やフリフリのドレスを着るのはちょっとな……って思っているので。 でもコロナ禍がきっかけで、「みんな家にこもってつまらない日々が続いているのなら、楽しんでもらいたい。笑われてもいいからやってみよう」とライブをやらせてもらったら、想像以上に楽しかったんです。 例えば、「部活の時にこの曲を聴いてたな」とか、それぞれの思い出を振り返れるような時間を作れるのなら、よければ歌わせてもらおうと。ファンの方々への感謝もあるので、呼んでいただける限りは続けたいです。 ――年を重ねるにつれ、若かった頃の自分と比較して悩む人も少なくありません。南野さんは、今直面している悩みはありますか? 南野陽子: 更年期障害に関しては、少しずつ元気な日も増えてきたので、そういう悩みが晴れていく時期なのかなと感じています。 そうは言っても年齢はどんどん重ねているので、若い頃と比べて「あれっ?」と思うことはたくさんありますよ。膝の痛みが気になったり、セリフ覚えが悪くなったり、噛みやすくなったり……。老眼でどうしても台本が読めなくて、スタッフの方に確認することもあります。 でも、こういう老化は、もう、笑っとけって話です。昔はできたのにと思ってしまいそうな時も「いや、いい感じで歳取ってる!」って(笑)。 ――“老い”に抵抗感を抱く必要はないと。 南野陽子: 30歳くらいで「歳をとった」なんていう人もいますが、「何を言ってんの!」って感じです(笑)。50歳を過ぎたらもう第3段階、第4段階へと入っていくんだから。これは自分一人だけがそうなるんじゃなくて、みんなそうなんです。なので私は、「老化、いらっしゃい」と受け入れてあげたい。 それに、70歳や80歳で突然おばあちゃんになる方が、よっぽどショックじゃないですか。だから今いる場所にこだわらずに、次の段階へと進んでいけばいいんじゃないかなと思います。 老化やいろいろな変化に、無理にあらがわない。これは身体のことに限らず、仕事や人生についてもそうです。若い頃の私は、誰かにもらった意見にも「こうした方がいいんじゃないですか」とつっかかって、とにかく流されまいとストイックになっていました。でも、そうやってあらがうよりも、流れに任せてみた方が負担もかからないし、きっとどこかしらの場所に辿り着けるんじゃないか。今はそんな風に思います。 ----- 南野陽子 1967年、兵庫県生まれ。女優、歌手。1985年、18歳の誕生日に歌手デビュー。ドラマ「スケバン刑事2」「時をかける少女」で注目を集め、歌手としてもヒット曲を生み出す。その後、ドラマや映画、舞台などに数多く出演。1992年、映画「寒椿」「私を抱いてそしてキスして」で日本アカデミー賞優秀主演女優賞を、1995年「三たびの海峡」で助演女優賞などを受賞。 文:市川茜 (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました)