「妊婦が女性じゃないなんて」と猛反発も……ウィーンの新「優先席ピクトグラム」が大炎上した背景
先月、オーストリアのウィーン公共交通機関が地下鉄車両内の優先席ピクトグラムをジェンダーニュートラルなデザインに変更したところ、同国で大論争が巻き起こりました。 【画像】ウィーン名物、肩を組むゲイカップルの赤信号
◆ピクトグラムのデザイン変更が国を揺るがす大論争に
オーストリアの全国紙Der Standard(デア・シュタンダルト)の当該記事には1560件ものコメントが投稿されましたが、これは人口がわずか913万人(2023年統計)の同国にとっては驚くべき反響。総人口がオーストリアの約13倍の日本に単純計算で当てはめれば2万件超のインパクトとなりますが、Yahoo!ニュースでもこれほど多くのコメントを集めるトピックはそうそう見かけないことを考えれば注目度の高さが分かります。 話題の優先席ピクトグラムの新旧を比較してみると(いずれも左から)、2007年導入の旧ピクトグラムは、女性の胸の谷間まで描かれています。 ①ステッキ・ハンドバッグ・眼鏡姿の老婦人(高齢者) ②視覚障害者の腕章・松葉づえ・眼鏡姿の女性(身体障害者・負傷者) ③幼児連れ・ヒゲ姿の男性(子連れ) ④スカート姿のおなかの大きな女性(妊婦) 対照的に、今回新たに採用されたピクトグラムでは老若男女の特徴を極力排除したジェンダー中立かつユニバーサルなデザインとなっていることがうかがえます。 ①子どもを抱いた人間 ②ステッキを持った人間 ③おなかの大きな人間 ④視覚障害者の腕章と杖を持った人間
◆ピクトグラムに寄せられた賛否のコメント
今回の変更に関しては、 「「個性は不要、シンプルで分かりやすい」 「スタイルが時代と共に変化するのは普通」 「誰も排除されないよう、当たり障りのない表現になった」」 と肯定的な声が上がる一方で、人間味のあるデザインに慣れ親しんでいたウィーン市民の中には納得がいかない人も少なくない様子。 「「性別中立と言いながら、男性4人に見える」 「姿勢が良過ぎて老人に見えない」 「この標識は黒人向け? 白人は座れないのか」」 など、画一的なデザインの限界に批判的な意見が多数寄せられたほか、 「「操り人形師、羊飼いかハイカー、ビール腹のハゲおやじ、盲目のゴンドラ船頭(※1)の風刺画か?」 ※1:操り人形劇は現在もオーストリアの子どもに人気、羊飼いとハイカーはアルプス国のオーストリアでよく見られる光景、国民1人当たりのビール消費量がヨーロッパ第2位(2021~2022年)、ゴンドラは隣国イタリア名物、という文化的背景から」 というヨーロッパならではのユニークな発想も見られました。このほかにも、 「「グラフィックが簡易化されただけで、なぜこれほど怒る?」 「ジェンダー論争白熱し過ぎ」 「こんなことより戦争やインフレの心配をしたらどうだ」 「税金を投入してまで変更する意味が分からない」」 など、ジェンダー論に無関心な層からの冷めた意見もあり、賛成派・反対派と共に三つどもえを成して、ここでは到底紹介しきれないほど白熱した議論となっていました。