【紀州のドン・ファン】新たな“売人”が証言した覚醒剤取引現場にいた「もうひとりの女性」の意味
■ 注目の「最後の証人」は2人目の密売人 「紀州のドン・ファン」こと野崎幸助氏が2018年に自宅で死亡していた事件で殺人罪に問われている妻の須藤早貴被告の裁判員裁判が、9月12日から和歌山地裁で開かれている。すでに11月8日からは早貴被告に対する被告人質問が始まっているが、ここではその前の最後の証人尋問について報告したい。 【写真】2018年5月25日、「紀州のドン・ファン」野崎幸助氏が急死した翌日の夜、和歌山県警の刑事に妻だった須藤早貴被告(左)が任意同行を求められた瞬間。中央がお手伝いさんの大下さん 裁判では検察側の証人として多くの人物が出廷した。野崎氏の経営する会社の従業員をはじめ、元妻Cさんや大阪の愛人「菜々ちゃん」(仮名)、「真美ちゃん」(同)、「ミス・ワールド」などで、その証言内容についてはJBpressで詳細にお伝えしてきた。11月7日の公判で登場するのは通算28人目となる証人で、最後の証人尋問だった。 誰が証人に誰が呼ばれているのか傍聴人には知らされていない。そのため取材する記者たちの間では「最後の証人は検察側の“隠し玉”的な人物なのではないか」という憶測も飛び交っていた。 そしてこの日、法廷に姿を現したのは、なんと腰縄に手錠姿の男性だった。手錠をしている意味についての説明はなく、拘留中なのか服役しているのかも分からない。男性――以後、この男性を「X」とする――は法廷で、自分の名前と年齢が29歳であることを明らかにし、覚醒剤の売人であると述べた。 早貴被告の一連の裁判では、すでに10月1日に覚醒剤の売人「Y」が出廷しているが、さらに別の売人が登場したことになる。 Yが出廷したときには証人席と傍聴席がパーテーションで仕切られており、傍聴人の位置からはYの姿形は分からないようになっていった。ただ、Yはかなり乱暴な言葉使いをしていたので、その証言にも妙なリアリティーがあったものだ。今回のXに対しては、そのような対応はなかった。
■ 「覚醒剤」か「氷砂糖」か Yの証言によれば、2018年4月7日の夜7時ごろ、覚醒剤を購入したいという若い女性からのオーダーがあり、大阪市内に住んでいたYは「仲間」や知人女性ら4人で田辺市までブツを届けるため、自家用車を飛ばして深夜0時ごろに指定された場所まで行ったという。Xはその仲間ということになる。 YやXの証言によれば、大阪から田辺市に車を飛ばしてやってきた売人一行は、日付が変わった8日午前0時すぎ、国道42号線沿いの、野崎氏の自宅からほどちかいコンビニに到着。車を降りたYは近くの路地で早貴被告と接触、そこで品物を手渡したという。 ただし、Yは「覚醒剤を10万円ほどで」、Xは「氷砂糖を15万円で」取り引きしたという点が食い違っている。 また、Xによると、この取り引きを仕切ったのはXであり、YはXの下に位置する存在だったという。Xは“ブツ”を用意したのも自分であるとした。 さらにXは、取引現場で襲われる可能性も考慮し、念のため護身用にヌンチャクも用意していたことも法廷で明らかにした。実際の取り引きの際には、Yを早貴被告との品物の受け渡しに使い、自分は車の中で怪しい人間がいないのか周囲に注意を払っていたのだという。 このあたりのことは他のメディアでも報道されているので、ご存じの読者も多いかもしれない。ただ筆者は、新聞やテレビが報じていないXの「ある証言」に驚いた。