世界の研究者が驚いた観察眼「サルしかいない動物園」の高崎山が70年続く秘密 名物ボス、観光名所…でも本当に凄いのは職員
B群のボスだった時、C群のメスに誘惑され、トップの座を捨ててC群に加わった。C群では新入りのため序列が下位に転落したが、ベンツはそれで終わらなかった。 落花生の殻を食べて空腹をしのぐ長い下積み生活を経て、「武闘派」として頭角を現し、2011年にはC群のボスに。二つの群れでボスになったのはベンツだけ。2014年を最後に園に姿を見せなくなり、死んだとみなされた。 ▽史上初めてメスでトップに立った「ヤケイ」の強烈な家系 ボスザルはオスだけではない。2021年7月から23年5月26日までB群トップとして君臨したのはメスの「ヤケイ」。序列上位のオスたちが高齢になったタイミングで当時のボスを強襲し、トップの座をつかんだ。体格は小柄だが、持ち前の負けん気を発揮した。 ニホンザルは基本的にはオスが序列をつくり、群れ全体のトップに就く。メスザルのボスは高崎山では初めてで、ニュースは海外でも話題となった。
ヤケイは2023年5月26日、オスの「ゴロー」にトップの座を明け渡す。サルの序列は原則としてオスの間でつけるため、序列外となった。ボスでなくなったヤケイは今年6月、メスの赤ちゃんザルを出産した。 園によると、6月8日午前10時ごろ、ヤケイが園内の餌付け場所に姿を現した際、胴体にしがみつく赤ちゃんザルがいた。雨が強まると軒下に入り、体全体で包み込むように守っていた。その後も園内でヤケイが乳を与える姿などが目撃されている。荒い気性は身を潜め、かいがいしく世話する姿が評判だ。 相手は誰か。新たにボスになったゴローとの交尾も確認され、一緒にいる姿も目撃されているが、園は「赤ちゃんザルの父親は誰か分からない」としている。ニホンザルは複数の相手と交尾するためだ。 園の職員たちが心配しているのは、ヤケイと赤ちゃんの関係だ。理由は家系にある。 ヤケイの祖母に当たる「オレケイ」は、当時からB群の中で地位が高かった。ところが、その娘の「ビケイ」は気性が荒く、母であるオレケイを倒し、のし上がった。そのビケイの娘がヤケイだ。2021年3月、ビケイは娘のヤケイと取っ組み合いになり、敗北。母オレケイから奪い取った権力の座を、娘に奪われた。