考察『光る君へ』22話 周明(松下洸平)登場!大陸の波打ち寄せる越前での運命的な出会いからの衝撃「日本語喋れるんかい!!」
大河ドラマ『光る君へ』 (NHK/日曜夜8:00~)。舞台は平安時代、主人公は『源氏物語」の作者・紫式部。1000年前を生きた女性の手によって光る君=光源氏の物語はどう紡がれていったのか。22話「越前の出会い」では、父・為時(岸谷五朗)とまひろ(のちの紫式部/吉高由里子)が赴任してきた越前での生活が始まります。そして、新たな人物との出会いが! ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと、絵師・南天さんが各話を毎週考察する大好評連載22回です。
大陸からの波
為時(岸谷五朗)の宋語が宋人たちに通じた! ……あっ、しかし。でも、対ネイティヴのヒアリングは? と、まひろ(吉高由里子)と一緒にヒヤリとした瞬間、通事(通訳)三国若麻呂(安井順平)が登場したので一安心。 三国「宋人は戦を嫌います。唐の世とは違います」 唐が滅んだ(907年)のち、五代十国の興亡を経て宋代へ。政治経済、文化は大きく様変わりしていった。海外貿易が盛んになり、日本への影響も強く大きくなってゆく。 道長とまひろが生きるこの頃(1000年前後か)、日本国内では貨幣はなかなか流通せず、物々交換が主な経済であることは、これまで作品内でもたびたび描かれてきた。第1話で、まひろの母・ちやは(国仲涼子)が下働きの者たちに渡す給料が穀物であったり、第4話で花山帝(本郷奏多)が民が銅銭を使いたがらないことを問題視したり。 貿易を活発に行う宋によって宋銭は東アジアに広く流通し、日本ではこのあと150年ほど経って、平清盛が宋銭を大量輸入して貨幣経済が定着し始めることとなる。大河ドラマ『平清盛』(2012年)第8話のタイトルはズバリ『宋銭と内大臣』だった。 まひろと為時は今、大陸からの波……宋がもたらす大きく長い変化の波を、まともに受ける場所に立ったのだ。
周明との運命的な出会い
「この海の向こうは宋の国よ」 その大陸からの波が打ち寄せる越前の浜辺で、周明(松下洸平)との運命的な出会い。運命かどうかはまだわからないが、松下洸平だからそう決めた。 相手が宋人の若い男なので「戻りましょう、姫さま。帰りましょう」と促す乙丸(矢部太郎)の言葉は、都の時と同じく綺麗にスルーされる。乙丸、ドンマイ……。 「私の名前はまひろ」 これに「周明(ヂョウミン)」と砂に書いて答える。発音はともかく、少なくとも字では通じる。漢字文化のありがたさである。