救急車「不適正利用」解決に“利用料”徴収はありか 「入院しない軽症者の搬送7700円」始めた地域も
財務相の諮問機関である財政制度等審議会が2015年6月にとりまとめた意見書(建議)で、「(救急出動の急増を容認し続ければ)真に緊急を要する傷病者への対応が遅れ、救命に影響が出かねない」として、諸外国で救急出動を有料化している例を引き合いに出しながら、救急車の一部有料化を提案した。 ただ、実現には有料には至っていない。 重症者を無料にして軽症者を有料にする案に対して、 ▽誰が軽症と判断すればいいのか▽料金の徴収は病院が担うのか、救急隊が担うのか▽生活困窮者が救急要請を躊躇したことで重症化してしまうのではないか
――などの意見が噴出し、現場でのトラブル発生などを懸念して、議論は進まなかった。 ただ、海外で救急車を有料化している事例はある。代表的なのが、アメリカのニューヨークやフランスのパリだ。 ニューヨーク消防局は2023年5月、近年のコスト上昇と救急隊員の賃上げのため、基本料金を900ドルから1385ドルに引き上げた。また、傷病者の重症度により料金を変えているほか、搬送距離に応じて1マイルごとに20ドルが必要になる。このほか、酸素投与には66ドルなどオプション料金もある。これらの料金は、直接か保険経由で徴収している。
パリでは緊急度に応じて、救急搬送の際はSMUR(救急機動組織)やBSPP(パリ消防隊)、民間救急車のいずれかを利用する。 SMURは300ユーロが基本料金で、距離などに応じて加算される。BSPPは原則無料だが、不適正利用をすると懲罰的な料金を徴収される。民間の救急車は固定料金65.51ユーロに、5キロ以下・10キロ以下・15キロ以下・20キロ以下ごとの定額料金が加算され、これらを上回ると、1キロ当たり2.44ユーロ加算される。
■日本でも「費用を徴収する」試み 有料ではないものの、国内にも似たような取り組みが行われているところがある。 三重県松阪市の松阪総合病院、松阪中央総合病院、松阪市民病院は、2024年6月から救急搬送された患者で入院に至らなかった場合、「選定療養費」として7700円を徴収することを始めた。 選定療養費とは国が認めている制度で、都道府県知事が「地域医療支援病院」と承認している200床以上の病院を、紹介状なしで受診した患者から徴収するものだ。