救急車「不適正利用」解決に“利用料”徴収はありか 「入院しない軽症者の搬送7700円」始めた地域も
このほかにも、酔っぱらった人による救急要請のほか、病院の外来で長時間待つのが嫌だという身勝手な要請、寂しいから話し相手になってほしいといった連絡もある。 不適正利用とはいえないが、スマートフォンやアプリの「緊急SOS」機能の誤作動もある。 発信された緯度経度で位置を確認すると、河川にかかる橋の桁下あたりと推測され、川で溺れた可能性があるとして現場に向かったものの、誰もいない。原因を調べると、川の下に落ちたスマホが何かの拍子で誤作動し、緊急SOSにかけてしまったのだった。
■現場到着・病院収容に時間がかかる 救急出動急増で問題になるのが、要請から救急車が現場に着くまでにかかる「現場到着所要時間」と、病院で医師に引き継ぐまでに要した「病院収容所要時間」が長くなっていることだ。 救急車は傷病者を乗せても、受け入れ先の病院が決まらないと動かない。 救急出動件数が増えれば、現場から遠い救急車が出動するため、現場到着所要時間は必然的に長くなる。これに伴い、病院収容所要時間も長くなっている。2022年の現場到着所要時間の全国平均は約10.3分(前年約9.4分)で、病院収容所要時間は約47.2分(同約42.8分)だ。
前出の有賀氏は、「腰痛を訴える高齢者に、肺や気管支に慢性炎症が起こっているCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の持病があるとか、脳卒中で5回目だとか。そういう高齢者の受け入れ先の病院を決めるのが困難な状況もある」と、高齢者の救急搬送の難しさを指摘する。 社会医療法人慈生会等潤病院(足立区)は、2023年度に2786台の救急搬送を受け入れた。 同院の伊藤雅史理事長・院長は、高齢者の急増で救急搬送を受け入れにくくなる事情について、このように説明する。
「高齢者はそれほど重症でなくても、入院後に『廃用症候群』といわれる日常生活での自立度が低下した状態になることが少なくない。自宅に戻っても単身のため家族などによる介護が期待できなかったり、単身でなくても老老介護であったりするため、在宅復帰が困難になり入院が長引く」 その結果、患者が病院に“滞留”する状態になり、新規の救急搬送者を受け入れにくくなるという。 ■救急車の有料化は可能か こうした救急搬送の増加を何とかすることはできないものか。そういう点で、今から約10年前、救急車有料化の議論が盛り上がったことがある。