アイアンマンはなぜ死んだのか?脚本家チームが「崇高な死」で見せたかったこと
MCU・アベンジャーズの集大成『エンドゲーム』では、トニー・スタークが壮絶な死を迎え、多くのファンが衝撃を受けた。その裏には、脚本家チームの緻密な構想とルッソ兄弟の意向があった。ダウニー・ジュニアの葛藤を乗り越え、最終的な決断に至るまでの物語とは。本稿は、ジョアンナ・ロビンソン、デイヴ・ゴンザレス、ギャヴィン・エドワーズ『MCU 比類なき映画スタジオの驚異的〔マーベル〕な逆転物語』(フィルムアート社)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● すべての制約がないなかで出された 結論は「アイアンマンの死」 脚本家チームは、まず「青空」文書の作成から作業に入った(「Blue sky memo」法的、資金的、政治的制約がなかったらどのような活動が可能かという考慮のためにCIAが2000年に作成した文書)。 マーベル・シネマティック・ユニバースがファンに対して何を提供できるかという可能性を、徹底的に考慮するための作業だった。作業開始から間もなく、トニー・スタークが身を挺して死を迎えることの必然性に、マーカスとマクフィーリーは気づいた。 その崇高な死によって世界が救われるというのが、トニー・スタークというキャラクターがたどって来た旅路に対して理に適った終わり方だ。この案にルッソ兄弟もマーベル・スタジオの幹部たちも同意した。 最初の『アベンジャーズ』でスティーブ・ロジャースに「君は犠牲打を打つタイプではない」〔字幕は「自分を犠牲にできる人間じゃない」〕と言われたスタークが、こんなに遠くまで来たのだと見せることができる。 トニー・スタークの壮麗な死という案の承認を得るために、ルッソ兄弟はロバート・ダウニー・ジュニアを訪れた。 自分の分身と言えるほどに広く認知された役柄を殺してしまうことに、ダウニーは躊躇したが、完結編がどのように終われば腑に落ちるかルッソ兄弟に説明されて、最終的に承諾した。