アイアンマンはなぜ死んだのか?脚本家チームが「崇高な死」で見せたかったこと
「ここ5年の間に、マーベルによって映画史に残るような物語の展開が実現しました」とダウニーは『エンドゲーム』の撮影現場で言った。「素晴らしい人材にすべてを委ねることができて、最高の気分です。ほら、なんとかなるさって言うでしょ?」 ● サノスが映画に登場する以上 誰かが死なねばならない そしてサノス。彼を本当に恐ろしい存在にしなければならないことを、クリエイティヴ・チームの面々は理解していた。何年もの間、さまざまな事件の背後にサノスの影があったわけだが、その姿は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のエンドクレジット中の場面でちらりと見えただけだった。 サノスが登場する物語の中でも人気が高いのは、1991年から連載が始まったミニシリーズ「インフィニティ・ガントレット」だ(ジム・スターリン作、ジョージ・ペレス、ロン・リム画)。サノスという宇宙きってのヴィランが、インフィニティ・ストーン〔コミックスではインフィニティ・ジェムと呼ばれる〕を集めて殺戮に手を染めるという話だ。 マーベル・スタジオは何年もの間このコミックスを映画にする案を転がしてきたのだが、ここでついに映画化に踏み切った。 コミックスでは、サノスのマルサス主義的な攻撃によって、全宇宙のあらゆる生命体の半数が消滅してしまう〔トマス・ロバート・マルサスは人口と資源の関係を考察した〕。
アベンジャーズはただ負けるのではない。メンバーの半数が塵と化して消えるのを見ながら敗北を味わうのだ。 ● 誰が消えて誰が残るか 出演ギャラも含めて激論 サノスが指をパッチンと鳴らしたときに消えるのは誰か。その決断を下すためにファイギは、マーカス、マクフィーリー、ルッソ兄弟、そしてエグゼクティヴ・プロデューサーのトリン・トランを会議室に集めて話し合った。 会議室には、映画に出しても問題のないMCUのキャラクター(つまり全員)の名前と写真がついた野球カードより少し大きなカードが、ランダムに置かれた。裏面には演じる俳優の契約条件と報酬が書かれていた。 「実際に俳優たちの報酬がいくらかは知りませんが、カードには$が1つから5つまで書いてありました」とマクフィーリー。 その俳優とはすでに契約が交わされているのか、それとも新たに契約を結ぶ必要があるかどうか?カードはテーブル上で入れ替えられたり、ホワイトボードに留められたりしたが、ゲームの規則は1つ、誰が生きて誰が死ぬかだった。 6人は早々に生き残りを選択し、それを変更することはほとんどなかった。カードに報酬情報を書きはしたが、ファイギによると決断の肝は、誰が消えると「一番心が張り裂けるか」だった。