アイアンマンはなぜ死んだのか?脚本家チームが「崇高な死」で見せたかったこと
こうして選ばれたのは、最近観客の支持を得たばかりのティ・チャラ。スティーブ・ロジャースの心が張り裂けるのでバッキー・バーンズ。そして同様にトニー・スタークに強烈なダメージを与えるという理由でピーター・パーカー。アベンジャーズの創立メンバーである6人は、それぞれの物語に決着をつけられるように生かされた。 そしてアベンジャーズではない幅広いキャラクターも、残された。マーカスが説明してくれた。 「冗談を言い合っているとネビュラが入ってきて、皆が気まずく黙るというような感じで、遊べます。皆が真面目な顔をしているとロケットが入ってきて皆を茶化すこともできる」 集められた6人は、『エンドゲーム』はMCU史上でも試みられたことのないような戦闘場面で幕を引かなければならないことも理解していた。それはつまり、無駄にできる時間が一切ないということでもあった。 ● マーベル社長のこだわりは 「全員が出演してサノスと戦う」 マーベル・スタジオはCGI制作にILMを雇い、プリビジュアライゼーションとポストビジュアライゼーション(撮影済の映像を使って仮デジタル合成してみる工程)のためにサードフロアを雇った。 「ケヴィンの基本的な考え方は」とトリン・トランが言う。「最後には全員が出演してサノスと戦う、それが彼が実現したい夢なのです」。
MCUのスーパーヒーローを全員登場させると決めてからが、作業の本番だった。 「その前提から『で、第1部で誰が消えて今回再登場できるのは誰?誰が誰とどういう風に絡んでた?』といった具合に、いろいろ積み重ねていきました。ただ戦闘シーンだからといって戦っているみたいには、当然したくなかったので」 マーベル・スタジオが製作した映画には、コミックスで言うところの「見開き」つまり開いた左右両ページに描かれた1枚の画に相当する、インパクトが強いイメージが使われてきた。 そして、そのような画の中に収まるキャラクターの数は増え続けた。 『アベンジャーズ』のニューヨークの戦いで円陣を組んだ6人のアベンジャーたち。それが『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』ではライプツィヒ・ハレ空港での12人のスーパーヒーローによる対決になり、『エンドゲーム』では瓦礫と化したアベンジャーズ本部に集結する何十というヒーローたちという、MCUの究極の見開きイメージになったのだ。 最終決戦の作業は2016年にプリビジュアライゼーションから始まり、2019年に開かれた報道関係者向け試写の数週間前まで続けられた。 「最終決戦の撮影の大半は2018年までほとんどやっていませんでした」と、『インフィニティ・ウォー』と『エンドゲーム』の編集者ジェフリー・フォードが説明する。