【センスあふれる古牧ゆかりさんの旅の記憶】ウズベキスタンで出会った素敵な物
スザニのような伝統工芸だけでなく、職人によるハンドメイドの生活雑貨や日用品が露店や市場で売られており、その中からお気に入りのものを見つけ出すのも楽しいひとときだった、と古牧さん。 「クラフトならではの肌触りとか質感とか、ちょっと歪んだフォルムとか、既製品やモダンで洗練されたデザインにはない趣に心が惹かれるんです。購入した木彫りのカッティングボードも、よく見ると彫り方が安定していなくて、所々ボコボコしているし、模様も、一部掘り忘れてしまったのか、よく見ると左右対称になってないんです(笑)。砂漠の近くで購入した靴下もそうで、網目は粗いし、丈夫そうなものを見つけるのに苦労しましたが、手編みならでの素朴さと温もりが素敵だなと」
カッティングボードを購入した露店。ずらりと吊るされた商品は、それぞれ繊細で美しい模様に目を惹かれるが、確かによく見ると不揃い感やわずかな歪みも感じられる
「洗練されたデザインの家具や雑貨でつくる空間はとても素敵なんですが、それしかない空間に身を置くと、ピリッとした緊張感を感じてしまい、私は落ち着かないんです。 だから、そういう要素は10あるうちの1個か2個くらいにして、残りは旅で出合った素朴な物や、好きで集めた物を、雑多に共存させたい。それが今の私の部屋であり、ウズベキスタンで出合った物も、私にとっての心地よさにつながっていると思います」 古牧ゆかり スタイリスト/ビジュアルディレクター。ファッション誌で活躍後、渡仏。パリに暮らす。帰国後『エル・ジャポン』のファッションエディターに。現在はフリーでファッション、インテリアのスタイリングや動画制作のビジュアルディレクションを手がける。本誌ファッション特集でも活躍中。 BY EMI ARITA