「ネットとリアルの融合」で躍進した国民民主党、研究したのは石丸伸二氏 SNSと人流データが示す今後の選挙戦略とは?【データ・インサイト】
一方、自民党は「裏金事件を踏まえて『炎上』を警戒したのかもしれないが、発信は控えめで、多くが政策の説明など従来型のものにとどまっていた印象だ」と述べている。 中村代表によると、国民民主党は政策の訴えに加え、ショート動画などを通じて玉木代表や榛葉賀津也幹事長らの人柄を前面に押し出した。支持者が作成したゲームを玉木氏自身がスマホで操作する動画を投稿するなど、支持者との距離を縮めようとする姿勢を積極的に示した。 また、ユーチューブの生配信では視聴者のコメントにリアルタイムで応答し、「有権者の声を聴いている」という姿勢をアピール。街頭演説の生配信では、終了時に玉木氏がカメラに駆け寄り「皆ありがとう!」と語りかけ、視聴者との一体感を演出した。こうしたSNS活用の積み重ねが「リアルと融合」し、新たな支持層の獲得や街頭演説の聴衆の増加、ひいては得票の大幅な伸びにつながったと見ている。 普段からのネットにおける発信も訴求力を高めた。玉木氏は2018年からユーチューブで公式チャンネル「たまきチャンネル」を運営し、ユーチューバーとしても活動してきた。玉木氏自身、「選挙になったからSNSを使い始めるのでは票は取れない。普段からの『ネットどぶ板』が大事だ」と語る。選挙がない時期にも一軒一軒、選挙区の有権者宅や企業を訪問するなどして、地道にPRする「どぶ板選挙」になぞらえた発言だ。
▽フォロワー数増とユーチューブ視聴数で断トツ ネットどぶ板の効果はデータにもはっきりと現れている。ネットコミュニケーション研究所の集計で、公示日(10月15日)から投開票前日(26日)までのX(旧ツイッター)のフォロワー数の伸びは、玉木氏が全候補者の中で断トツで多かったのだ。フォロワー増加数は約29700に上り、2位の自民党・高市早苗元経済安全保障担当相の約8600に比べ3倍を超えていた。榛葉賀津也幹事長の存在感も上昇し、Xのフォロワー増加数は党首で3位の参政党の神谷宗幣代表を上回った。 期間中のユーチューブ動画視聴数も玉木氏は群を抜いている。228万回に上り、100万回を下回る2位以下を引き離していた。 インスタグラムでも「快進撃」が見て取れる。フォロワー増加数は玉木氏が2100超で、政党公式アカウントと党首の中で唯一2000を超えた。 ▽石丸伸二氏を研究 データを見ると、衆院選期間中、SNSや動画配信で最も「バズった」のは玉木氏だった。そして、それはリアルな得票に現れた。 今年行われた選挙で、同じような例がある。7月の東京都知事選で、落選はしたものの知名度のある蓮舫氏を得票で上回った石丸伸二氏だ。動画のライブ配信や、自身の演説などを編集した「切り抜き動画」の拡散を呼びかけて支持を急拡大し、小池百合子都知事に次ぐ2位につけた。