「ネットとリアルの融合」で躍進した国民民主党、研究したのは石丸伸二氏 SNSと人流データが示す今後の選挙戦略とは?【データ・インサイト】
ただ、玉木代表の街頭演説の盛り上がりを踏まえれば、「与党に入れたくないから」という消極的な支持だけとは思えない。政策の浸透や党の好感度アピールが、積極的な評価に結びついた面があるのは確かだろう。 ▽「リアルだけじゃだめ」 衆院選の開票が進み躍進が確定的になった直後の記者会見で、玉木氏は支持拡大のポイントについてこう述べている。「リアルだけじゃだめ。ネットとの融合ができて初めて票につながる」。どういうことだろうか。 まず、リアルな活動について、従来型の選挙運動である街頭演説から考察してみよう。10月26日に行われた選挙戦最後の街頭演説会場の人流データを紹介したい。会場を含む500メートル四方のプライバシー保護された位置情報をNTTドコモが統計加工し、IT企業「ロケーションマインド」が分析したもので、共同通信が時間帯を絞り込むなどして詳細を調べた。増減は今年9月の同じ曜日(土曜)の平均値も用いて比較した。
玉木代表の東京駅前における演説が盛り上がったのは写真を見れば一目瞭然だが、まずこの演説会場付近について見ていく。普段から人出が多いエリアだけに、明らかな人流の変動は観測されなかったが、玉木氏の登壇中はそれ以前より少なくとも1000人超が増加した。 より顕著な変化が確認されたのは与党だ。自民党総裁の石破茂首相が演説した東京・豊洲では、午後7時半前から人流の増加が確認され、集会が終わる午後8時には前月平均から4割超増えていた。公明党の石井啓一代表(11月9日に代表を交代)が訪れた北海道・岩見沢でも5割近く伸びた。 増えた人流の全てが聴衆とは言えないものの、大敗した自民党や公明党も裏金事件の逆風を受けながら国民民主党と同様か、それ以上の「動員力」を発揮していたことが伺える。 ▽際立った国民民主党のSNS戦略 では、玉木氏が躍進要因に挙げた「ネットとの融合」はどのように行われたのだろうか。今回の衆院選における全小選挙区候補者のSNS戦略を分析したネットコミュニケーション研究所の中村佳美代表は「国民民主党はショート動画や、生配信などを通じ『有権者の声を聴く政党』というアピールに注力した」と分析。「全政党の中でもSNSや動画戦略が際立って秀逸だった」と語る。