給料激減でも元気に仕事…”68歳、年収200万円”の「働き方の実態」
年収は300万円以下、本当に稼ぐべきは月10万円、50代で仕事の意義を見失う、60代管理職はごく少数、70歳男性の就業率は45%――。 【写真】意外と知らない、日本経済「10の大変化」とは… 10万部突破のベストセラー『ほんとうの定年後』では、多数の統計データや事例から知られざる「定年後の実態」を明らかにしている。
再雇用で同じ部署で働く
55歳のときに役職定年を迎え、同じ部署で働き続ける。別の部署から異動してきた上司はその仕事が未経験だったため、役職を外れても谷さんの仕事内容はこれまでとあまり変わらなかった。 60歳で定年となり、再雇用で週5日同じ部署で働くことに。66歳からは半年更新という雇用形態で、店舗が忙しい金曜、土曜、日曜の週3日勤務となり、いまに至る。 仕事内容は定年前の59歳から大きく変わった。数百ある全国の店舗から送られてきたデータをもとに、中古車を査定し下取り価格を設定する。お客様が待っているので、値付けの理由とともに、数字をすぐに返す必要がある。給料は大きくダウンした。 「そんなに難しい仕事ではありません。毎日多くの件数をこなさなければなりませんが、これでお金をもらっていいのかと思うくらいです。上司との難しい折衝なんかもありませんしね。勤務日数もいまは金土日と祝日だけの出勤です。要するに、忙しいときだけ。でも、私が仕事をしているから若手や中堅の従業員が休日にゆっくり休めて、家族との楽しい時間を過ごせるんです。だから、私の仕事はとても意義がある仕事だと思っています。休息時間に同僚と話すことも楽しいですよ」 「給与に関しては、私の父が地方公務員だった。だから、生涯ずっと上がってくんじゃなくて、必要なとき、要するに子育てで金かかるときに一番上げて、子育て終わったら下げていくんだって、親父から聞いてたもんですから。そういうものかと、頭にあったもんで、特に不満っていうのはなかったです。そういうものだと思ってました」
下取り価格決定のプロセスをオープンに
一方で、仕事の創意工夫は怠らない。たとえば、下取り価格決定のプロセスは担当者の暗黙知になってしまいがちだが、それを明らかにするようにした。 「どんなデータや情報を参考に決めたのかという記録をすべて残すようにしたんです。後進のスキルアップに使ってほしいと考えました。パソコンのサーバーの容量が少ないから無理だと会社には言われたんですが、私が何度もうるさく言ったので、できるようになりました」 55歳で役職定年となった。手当が減り、賞与も目減りした。そうしたなか、谷さんにも、ある時期までは出世して偉くなりたいという希望もあった。 「『可能性はいくらでもあるよ』と周りからも言われ、自分もその気になりました。でも、40代後半になると、自分の能力はこんなものだと徐々にわかってきます。そのときに考えが変わりました。上を目指すだけが仕事ではないと。仮に2週間、私が休んだら、この仕事は廻らなくなってしまう。そういう重要な役割を自分は担っているのだと思うようになりました」