1ドル161円台に。水準訂正に晒される円安は「危険水域」に【播摩卓士の経済コラム】
介入警戒感から1ドル=160円目前でもみ合っていた円相場が、26日の海外市場で、4月29日の市場介入直前につけた160円24銭という抵抗線をあっさり突破しました。 【写真を見る】1ドル161円台に。水準訂正に晒される円安は「危険水域」に【播摩卓士の経済コラム】 さらに28日の東京市場では、月末の実需のドル買いもあって、1ドル=161円台まで円は売られ、1986年12月以来、約37年半ぶりの円安水準となっています。 ■約10兆円の介入効果もわずか2か月 1986年と言えば、その前年に当時のG5(先進5か国)によるプラザ合意が成立したことを受けて、一本調子の猛烈な円高が進んでいた時期です。 逆に言えば、円安方向に向けたチャート上の抵抗線は、ほとんどなく、円安に歯止めがかからなくなる、いわば「危険水域」に入ったと受け止めるべきでしょう。 円安に対して、政府・日銀は、4月29日と5月2日に合計9.7兆円もの巨額の市場介入を行って、円相場を一時151円まで押し戻しましたものの、その後はじりじりと円安が進み、結局、介入効果は2か月しか持ちませんでした。 その前の2022年に行った市場介入の効果が1年以上持ったのとは大違いで、介入威力が大きく減衰したことも、「危険水域」と言える理由です。 ■金利差による円安という説明は本当か 市場で円安が進んだ理由については、今回も日米金利差に言及する記事が多いようです。 アメリカの経済指標やFRB関係者の発言があるたびに、「当面、日米の金利差が縮まらないとの見方から円売りドル買いが進み」というような説明される局面が、ずっと続いています。 この説明は、「昨日に比べて今日は」という変化を描写しているという意味で、間違っているわけではありません。 しかし、37年半ぶりにまで円安が進んだ理由を、必ずしも明確には説明していないように思えます。 日米の金利差が、1日で大きく開いたわけではありませんし、介入効果が失われた、この2か月を見ても日米金利差が大きくなったわけではありません。 今後、長い時間軸で見れば、アメリカが利下げ方向、日本が利上げ方向にあり、金利差が縮小するという大きなベクトルも変っていません。