企業は文化のために何ができる? 大阪「MUSIC LOVES ART」を振り返る
クリエイティブ地域圏実現のために
サマーソニック会場では、全3作家の作品が展示された。そのうち、奥の池では、オーストラリア先住民の伝統楽器「ディジュリドゥ」の奏者で、のちに絵画を手がけるようになったというGOMAのインスタレーションが行われていた。「ひかりの滝」と題された作品は、池の上に吊るされた複数のファブリックに描かれた、青い点描による輪、あるいは波型の絵画群だった。 ■クリエイティブ地域圏実現のために カンファレンス「MUSIC LOVES ART CONFERENCE ― Cultural business transformation(CBX)とクリエイティブ地域圏の実現に向けて」は、8月23日、コングレスクエア大阪中之島で行われた。5部構成の最初のセッションはAI技術の進展による創造的インパクトについて語る内容。また、セッション2は、「SXSW」(サウス・バイ・サウスウエスト)の成功事例を基に、関西でのクリエイティブ産業の可能性を議論した。 セッション3では、ユートニック共同代表の常田俊太郎、デキタ代表取締役の時岡壮太、KIDS EARTH FUND創設者代表の鳥居晴美、三人のカルチャープレナーたちの実践について、Forbes JAPAN編集長の藤吉雅春がモデレーターとなりディスカッションした。 常田は、稼ぐ意識が希薄なために活動の継続が難しくなりがちな音楽家をサポートしたいと、音楽家とファンをつなげるアプリUdom(ユーダム)を開発。Udomではファンとのやりとりが一元化されることによって、例えばアルバムを作りたい時などに予測がしやすくなる。モデレーターの藤吉は「文化はプレイヤー、ファン、メディアやキュレーターの三者のバランスによって深まっていく。Udomは好バランスだ」と評価した。 もともと建築設計の仕事をしていた時岡は、地元・福井県の空き物件をホテルやカフェにしたあと、土産品の開発から食品加工へ、またオートキャンプサイトの開発へと、さまざまな形で地域に関わっていっている。藤吉から成功の秘訣を聞かれ、「地方創生には複合的なアプローチが必要。宿泊業や飲食業、製造業が連携することで地域経済が活性化する」と答えた。 鳥居は、世界50カ国以上で子供たちと絵を描くワークショップを開催。この子供たちの描いた絵を企業に使ってもらうことでお金がまわる仕組みを作り上げている。「絵を描くのも難しい状況の地域もあるのではないか」と藤吉が問うと、家族や親戚17人を亡くした子供との出会いに触れ、「絵を描くこと自体がセルフカウンセリングになる」と話した。