石若駿とMELRAWに訊く、最強音楽プロジェクト「Answer to Remember」とは一体何なのか?
「バンド」としての使命感が生まれるまで
―安藤さんはもともと、どんな感じで声をかけられたんですか? MELRAW:俺と海堀弘太(Key)、佐瀬悠輔(Tp)、中島朱葉(Sax)、マーティ・ホロベック(Ba)ーー要するに現在のコアメンバーでプリプロするって言われたのが最初でしたね。「一回集まろうぜ」みたいな感じだったよね? 石若:そう。「アルバムを出すから、試しに音鳴らしてもいい?」って集めたのがそのまま1枚目になった、って流れだったよね。 MELRAW:そのときの駿は「各々の活動をだいぶやってきたから、一回みんなで集まって、やってきたことを持ち寄ってみよう」みたいなノリだったよね。当時のミレパ(MILLENNIUM PARADE)もそうだった。 石若: 2018年の忘年会でそういう話をしたんだよね。(常田)大希もいた。学生生活が終わって4年経ったから、そろそろ集まろうって感じだった気がする。 ―そのとき、石若さんの中ではどういう構想があったんですか? 石若:音楽的な内容としては「ジャズ」。ジャズのアプローチでどれだけポップな世界にたどり着けるか、みたいな構想はあったと思います。 ジャズってクローズドな世界だと感じていたんですけど、各々の活動がオープンになり、ポップスの界隈にも出入りするようになった。でも、みんなの根柢にはジャズがある。そういうバックグラウンドがありつつもオープンな活動をしている俺たちが、いままでお世話になったジャズをやろうってコンセプトでスタートしました。 MELRAW:アンリメは海堀や朱葉のように、イントロ(高田馬場にあるライブハウス、ジャムセッションで有名)チームも交えているところがよかったよね。 石若:僕とMELRAWのなかで「垣根がない状態」を公にしたかった意図もあります。こういう(ハイブリッドな)音楽を作りたいと思ったときに、同じ志をもった人を集めがちなんですけど、そうじゃなくて、一緒に育ってきて同じ景色を見てきた人たちも交えて音楽を作ることで、俺たちが見てきたものをジャズとか知らない人たちにも感じてほしいなって。それに僕はイントロで世話になって今に至る部分も大きいので、「俺のすべてを見てくれ」って感覚もありました。 ―中島朱葉さんや海堀弘太さん、若井優也さんはハイブリッドな音楽の仕事をあまりやらない「ジャズ」の人じゃないですか。彼らにはどんな感じで声をかけたんですか? 石若:いつもと変わらないですね、ジャズのギグをやるような感覚。ただ、会場がリキッドルームになったという感じ。彼らもいつもと違うシチュエーションを楽しんでくれているような気がしています。以前リキッドルームでやったとき、スタンダード「Summer Time」のチェンジで朱葉がソロにいき、お客さんがうわーってなったのはすごく気持ちいい景色でした。でも、朱葉はいつもどおり、イントロで普段やってるのと変わらなかった。それでいろんな世代の人たちが熱狂して、しかもスタンディングの会場で届いているのが良かったです。 ―今の話を言い換えると、彼らをスタンディングの場所に引っ張り出すことも構想にあったんですか? 石若:そうですね、隔たりをなくしたかった。逆に、MELRAWは上京してきた最初のころはイントロにいなかったんですよ。でも「一緒にイントロ行こうよ」と誘って連れていって。本人は「あまりスタンダード知らないから」とか言うんだけど、スタンダードを演奏してその場にいるお客さんやミュージシャンを圧倒していく姿を僕は見てるんですよね。 MELRAW:逆にいうと、俺はライブでスタンダードをやらないじゃないですか。俺をよく知ってる人は「安藤くん、ジャズ好きだよね」って言ってくれるけど、目立ってるとこだけ知ってる人からすると「フュージョンっぽい」とか「スタジオミュージシャン」って思われたりする。だから、アンリメは自分たちのいろんな面が出せるショーケースみたいなところがあるよね。 ―安藤さんにとっても、普段の仕事であまり出せないところを出せるプロジェクトだと。 MELRAW:そう。みんなでひとつの櫓(やぐら)を一生懸命建てるような感じもあって。今回のアルバムでは曲に関して相当な作り込みがされているから、これをどう生演奏でやろうかってところで、「じゃあ誰々がここ担当してよ」みたいなことをやってますね。最初は文化祭みたいな感じもあったけど、一回きりじゃなくなったことで、俺もそうだし各々に使命感が芽生えた。それがバンド感だと思います。ただ駿に呼ばれてやりきればいい、っていうんじゃなくて「アンリメのためにどうしようか」って考えるようになった。