球界に激震「ソフトバンクで高卒の育成入団は厳しい」育成ドラフト“まさかの入団辞退”ウラ側…現地で聞いた本音「二軍も出られない」優勝チームのジレンマ
チームで聞いた声「高卒の育成は厳しい…」
そんな中、チーム内でこんな声を耳にした。 「今のホークスでは、高卒で育成入団すると、かなり厳しい環境を乗り越えなければならないんです」 一体、どういうことか。 高卒の育成選手はたいていの場合、四軍スタートとなる。年間50試合程度(2024年シーズンの場合)組まれる四軍戦に出場しながらトレーニングも積み、時折三軍戦の出場機会もあるというのが大体のモデルケースだ。 たとえば1年目は四軍を主戦場にして、2年目は三軍、そして3年目には二軍とステップアップしていくのが理想形のようにも想像する。 しかし、声の主は首を横に振るのだ。
二軍にも出られない…なぜ?
「支配下に上がるためには最低でも二軍のウエスタン・リーグに出場してアピールをしなければなりません。そうやって上の軍に上がっていければいいのですが、毎年選手を獲る中には当然、大卒や独立リーグから入団する育成選手もいます。年齢が高い分だけ基礎体力はついているし、時間をかける余裕もない。だから彼らは三軍スタートが一般的です。そして……」 あるルールが“高卒育成選手”にとって壁になっていると言葉を継ぐ。 「二軍公式戦には育成選手が1試合につき5名までしか出場できない制限が設けられています。育成選手の人数自体が以前に比べて格段に増えて50名程度。高卒まもない育成選手が二軍戦に出場するのが難しい状況になっているのです」
成功した過去…球団のジレンマ
それを聞いて、改めて支配下昇格を果たした過去の例を振り返ってみると、ある事に気づく。過去5年の育成ドラフト入団組から今季までに9名が支配下昇格されたのだが、高卒入団からそれを勝ちとったのは今年が入団5年目だった石塚綜一郎の1名のみだった。なお、その前の5年間(2014年~2018年)では支配下登録された7名のうち4名が高卒入団だった。「難しい状況になっている」のは数字にはっきり現れているのだ。 とはいえ、だからソフトバンクの球団運営が悪いのかと言えば、それは違うだろう。この育成システムが存在しなければ千賀や甲斐をはじめとした多くの選手がプロ野球の世界に飛び込む機会はなかったかもしれない。 かといって選手側に非があると決めつけるのもよくない。このような話題になると必ず「プロ野球は厳しい世界だ」「それを承知で入ったのではないか」といった声が上がる。 しかし結局は、NPB12球団の球団育成システムの規模にバラつきがあるため、このような不満がどうしても生まれてしまうわけだ。ソフトバンクは球界唯一の四軍制を敷く独自路線のジレンマが浮き彫りになった。 永井本部長も「こういうこともあると受け止めているが、難しい。選手の思いは当然、揺れ動いたりするところもある。そのあたりは我々も調査はより深めてやっていきたいと思う一方で、人の気持ちをどこまで読めるかは難しい。『育成でいきます』と言って、こちらが評価した選手であれば、今後も指名していくことになる。指名後に選手の気持ちが変わってしまうことは仕方ないと思います」と古川の心情をおもんぱかりながらも、頭を悩ませている様子を見せていた。
(「野球のぼせもん」田尻耕太郎 = 文)
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