センバツ2024 人間性見抜く“頭脳” 退部、思い直し決意 京都外大西・阪部選手(2年) /京都
傍らにはアイドルの顔写真入りのクリアファイル。黙々とタブレット端末を操り、ノートにメモを走らせ、ライバル校の試合を分析する。阪部譲史選手(2年)は「分析班」として、京都外大西の躍進を支えた影の功労者だ。センバツに向けて丸山貴也コーチと共に「仕事」をスタートさせている。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち ◇人生まで「観察」 「プレーから人間性が見えます」と阪部選手は言う。相手選手の身長や強みなど基本的な情報はもちろんだが、その分析の真骨頂は人間観察にある。子供っぽいのか、将来どんな仕事に就きたいのか、勉強はできるのか――。端末の中にある選手たちの情報を抜き出し、これまでの人生、これからの人生にまで思いをはせる。「野球選手というよりも人として見ている」と丸山コーチもその能力を評価する。 分析、指示が的中したのは2023年の秋季近畿地区大会の試合。阪部選手は相手の主力投手がストイックでマイペースな性格であるという情報を入手した。そこで「足で土をならしてから打席に入った方がいい」と打者にアドバイス。少し間を取って相手のリズムで投げさせない狙いだったが、四死球が増え、勝利につながった。後日、相手投手が「なんやこいつら」と話していたと伝え聞いた阪部選手は「一番の褒め言葉ですね」とにやり。 監督やコーチも含めて部内で共有する野球ノートに好きなアイドルの歌詞を書くなど、話題に事欠かない「個性派」だ。独特な感性からふとつぶやく一言に、マネジャーは「物の見方が面白い」「私たちもまだ理解しきれない」と話す。チームの信頼は厚い。 実は昨年10月5日の誕生日に、けがなどで野球に対する熱意が薄れ、コーチ陣に退部の意向を伝えようと考えていた。思いとどまらせたのは杉浦智陽選手(1年)からもらった誕生日プレゼントのお菓子だった。「野球やめないでください‼」。箱の裏に書かれたメッセージに「自分を必要としてくれている人がいるんや」と気づき、野球を続けることを決意した。 サポートするのは、OBで自身も高校時代は分析を担当していた丸山コーチ。小学生の時に雑誌の配球コンテストに応募して賞をもらった。高校ではプロ野球選手の出身校を全て暗記した。根っからの分析好きだ。今も時間を見つけては大学野球や社会人野球、プロの練習や試合を見て、投手、野手のゲームの組み立て方などを学ぶ。 ◇勝たせる伝え方 2人は分析結果の伝え方にもこだわりがある。丸山コーチが大事にするのは「勝てる」と思わせること。例えば「雑誌で最速145キロの球を投げると書かれている選手も実際に球速を計ったら常時130キロ」などと伝える。選手が過度に身構えないようにするためだ。一方、阪部選手は伝える分析結果に信ぴょう性を持たせようと「えー」「まあ」などの言葉を使わないように意識して率直に内容を話す。 「分析で間違ったことを言って負けたくない」と阪部選手。対戦相手や日程が決まる3月8日の組み合わせ抽選会を心待ちにし、静かに闘志を燃やしている。【水谷怜央那】 〔京都版〕