税務署からの追徴課税を免れる効果も…「地主」が「不動産鑑定評価」を取得する、これだけのメリット【元メガ・大手地銀の銀行員が解説】
不動産鑑定士に求められること
不動産鑑定士試験では、主要な内容である「不動産の鑑定評価に関する理論(鑑定理論)」のほか、「行政法規」「民法」「経済学」「会計学」が試験科目となっている。 鑑定理論においては国土交通省が定める「不動産鑑定評価基準」の理解が不可欠であり、同基準の第一章第4節において、不動産鑑定士に求められる事項として以下のとおり定められている。 不動産鑑定士は、不動産の鑑定評価を担当する者として、十分に能力のある専門家 としての地位を不動産の鑑定評価に関する法律によって認められ、付与されるものである。したがって、不動産鑑定士は、不動産の鑑定評価の社会的公共的意義を理解し、その責務を自覚し、的確かつ誠実な鑑定評価活動の実践をもって、社会一般の信頼と期待に報いなければならない。 こうあるように、不動産鑑定士は不動産鑑定評価にかかる高い能力と知識が認められて資格を付与されていることから、高い倫理観と不断の勉強と研鑚が求められている。
地主が不動産鑑定評価を必要とするケース
地主業において不動産鑑定が必要となる代表的なケースを示すと、図表2のとおりである。 個人所有の不動産を一族の資産管理会社へ譲渡する場合においては、当事者間での取引であり、売買価格をいくらにするか客観的に算出することが困難である。そのような場合において、不動産鑑定士による不動産鑑定評価が必要となる。 そのほか、金融機関から借入を行う場合において、融資対象である不動産の担保評価を算出するために不動産鑑定評価が使われるケースもある。簡易的に担保評価を算出する場合には、相続税路線価などから計算した土地価格に各金融機関が社内で定めている建物建築費単価から経年減価(減価修正)を行って建物価格を計算し、当該土地価格と建物価格を合計して担保評価を定める。この場合においては一般的に不動産鑑定評価額より低く算出されてしまう。したがって、不動産鑑定評価の必要性が生じる。 また、不動産価格のみに限らず、賃料の評価も不動産鑑定評価の対象である。新規賃料や継続賃料の評価などで不動産鑑定が必要なケースもある。賃料交渉時において当事者間で賃料がまとまれば問題ないが、客観的に根拠を示す場合において利用される。 一方、不動産仲介会社が不動産の売却価格を算出するケースがあるが、これはあくまでも「査定」であって、「鑑定評価」とは異なるものである。鑑定評価として価格の算出ができるのは不動産鑑定士のみである。 地主にとって、不動産鑑定を行うことによるメリットは図表2の取引において専門家による客観的な価格や賃料を裏付けとして実施できることにある。 たとえば、法人化において廉価で取引を実施した場合においては、その後に税務署から贈与税や所得税の請求を受ける可能性がある。一方、不動産鑑定評価を取得しておくことで多くの資金を調達できる可能性がある。そのほか、価格や賃料の交渉において、不動産鑑定により客観的な数字を示すことで、双方が納得できる形で合意できる可能性がある。 不動産に関わるさまざまなケースで不動産鑑定評価取得によるメリットが大きい。