【箱根駅伝】「どけっ!」城西大・斎藤将也「言いました」前日5区のオートバイ接近、状況を説明
<第101回箱根駅伝>◇3日◇復路◇箱根-東京(5区間109・6キロ) 通算3度目の総合6位で箱根路を終えた城西大の斎藤将也(3年)が、前日の5区でテレビ中継のオートバイと接近した時に何があったのか、誠実に振り返った。 【写真】中継バイクの後ろを走る城西大・斎藤 「どけっ!」 前日2日、山登りの5区でハプニングが起きた。斎藤が山道を走っていた時、中継局のカメラマンを乗せたオートバイが近づき、あわや接触しそうになる場面があった。斎藤は、手で払いのけるようなしぐさを見せた上、先の言葉を、テレビカメラに向かって叫んだように見えた。 勝負の2日間を終えた本人が東京・大手町で日刊スポーツの取材に応じ、物腰柔らかく、当時を説明した。 「どけっ!」という文言について確認されると「はい、言いました」と真っ正面を向いて即答した。 「ちょうどカーブで。自分は最短距離をたどろうとしたところ、その走行ルート上にバイクのスタッフさんがいらっしゃって。最悪の事態ということもありますから、ジェスチャー(手を振って、どかそうとする動き)をしました」 続けて「ただ、あの場面でジェスチャーをしても、やはり運転手さんは前を向いているので。伝わらないと思い、声で危険だということを伝えないといけないと思いました。もし、ぶつかってしまえば、お互い、いい思いにはなりませんから。しっかり言わないと危ないと思って、はい、今回は自分から言わせていただきました」と打ち明けた。 最難関を、苦しみに耐えて登っている最中。「どいてください」など、敬語で言葉を増やすことは、現実的ではない。呼吸も乱される。何より「勝負」だ。闘争心が、ほとばしっている。力強く、大きな声を発するためにも、端的な2文字しかなかった。 この模様はアクシデントとして報道され、SNSも「カメラ邪魔すんな」など沸騰した。Yahoo!トピックスの主要トップにも採用され、広く知られ、物議を醸す事態に発展した。 「もちろん、あの直後は分からなかったんですが、話題になっていることは後で知って。驚きました」 箱根駅伝に出場経験がある俳優の和田正人が、X(旧ツイッター)を更新し「お互いに一生懸命だったって事です。誰が悪い、良くない、じゃないです。ランナーの皆さん、スタッフの皆さん、正月からお茶の間を盛り上げてくれてありがとうございます!!です」などとフォローの私見をつづっていたことも「はい、見させていただきました! ありがたかったです」と感謝した。 「その通りだと思うんです。どちらも悪くなくて。中継する方々もやっぱり仕事で頑張っていますし、こっちも走りで必死ですし。その中で、何て言うか、いい関係性で。中継していただけるおかげで、箱根駅伝が盛り上がっているわけですし、城西大学の名前も知っていただけるので。その中で、あの時、もし自分がぶつかっていたら、たぶん相手の方々が、いろいろ言われてしまっていたと思うんです。大変な事態になってしまいますし、それは望んでいません。今後の中継にも影響が出てきてしまうと思うので、今回は自分から『どけっ!』と言ってしまいました。ただ(事故を)防げて良かったのかなと思っています」 昨年11月の全日本大学駅伝でも「自分のすぐ脇をバイクに通過されて、ビックリしたことがありました」と明かす。その経験からも「やはり多々あることなので、あの状況では言わないと分からない。単純に、オートバイのエンジン音もあるので聞こえないでしょうし、やっぱり運転手さんは逆を向いていますし、でもカメラマンさんのお仕事がありますから。お互い、伝えるところは今後も伝えていかなければいけないなと思いました」と回想した。 レースとしては、各校の有力ランナーがそろう山登りで「区間3位」と好走した。昨年まで2年連続で区間賞を獲得し、大会MVPに輝いた「山の妖精」山本唯翔(現SUBARU)の後継者として、チームの期待に応えたかった。 「最低限という走りにはなってしまったんですけれども、昨日の全力は出せたのかなと思いますね。走路妨害とか、そういうふうに言われたりもしているようですけど、全然、一切、影響はなかったので。そこに関しては強調させてください」 自身が往路7位に押し上げ、チームも復路で踏ん張った。10、12年以来3度目の6位。昨年の史上最高成績3位には届かず、トップ5にも、あと1歩だった。 「目標は達成できなかったですけど、近いところまではいけたのかなと。(大手町で全員集合し)みんなの充実度を見ていると、持てる力は出せたので、やり切ったという感覚はありますね」 納得の走りは、沿道の支援者やファンはもちろん、テレビ中継を通じ、お世話になった人たちや全国に届けたつもりだ。【木下淳】