トヨタ・セリカXXは令和に乗ってもイイ! メーカー公認の“昭和のヒーロー”との再会に迫る
「カムに乗る」
なるべくオリジナルに忠実にレストアしたという室内をじっくりチェックする。振り返ってみると、A60型のセリカXXに乗るのは実に37年ぶり。学生時代、友人の兄がこの個体とまったく同じ仕様に乗っていたので、たまに運転する機会があったのだ。当時の筆者の愛車だったトヨタ「カローラ・レビンGTV」(AE86型)と比べると、乗り心地がよくてエンジンにも余裕があって、「高級だなぁ」という感想を抱いたことを覚えている。 はたして、その記憶は間違いではなかった。2.0リッターの直6自然吸気エンジンは低回転域からトルキーで、アイドリングの状態でクラッチをつないでもするすると発進する。けれども、まだ回転は上げない。セリカXXを貸してくれた友人の兄が口を酸っぱくして「最初の5分、10分は3000rpm以下で走れ」と、言っていたのを思い出したからだ。 エンジン回転を抑えて走りながら、乗り心地がいいことを確認する。きちんとサスペンションが動いている。ゆったりとしたサイズのシートの掛け心地がいいことも、乗り心地に貢献している。それほど古いクルマだと感じないのは、ハンドルにあそびがないことと、4輪ディスクのブレーキがきちんと利くからだ。 5MTのシフトフィールも上々。シフトストロークが少し長いから手首の動きだけでシフトが決まるというわけにはいかないけれど、シフトレバーの動きには節度があってシフトミスの心配はない。 エンジンが充分に暖まったところで回転を上げると、3500~4000rpmあたりからエグゾーストノートの抜けがよくなり、乾いた音質に変化する。同時に、タコメーターの針が盤面を駆け上がるスピードも加速する。久しぶりに、“カムに乗る”という言葉が頭に浮かぶ。ツインカムにもほどがある! とはいえ、目を三角にしてエンジンをギンギンに回すよりも、直6の滑らかな回転フィールを愛でながら、ゆったりクルーズするような乗り方のほうがこのクルマのキャラには合っているようにも感じる。