「サンデー」新編集長の決意表明にひそむ出版界の危機
00年代中頃からコミック雑誌のみで利益を出すのは難しい状況に
「2000年代中頃には、もうコミック雑誌のみで利益を出すのは難しいという状況だった。会社もそれを理解していて、コミックス(コミック単行本)の売上で補てんして、全体的に利益を出すという考え方だった。それだけ、コミック誌が売れなくなっていた。その時点で、雑誌連載→コミックス化→映像・ゲーム・グッズ化というマンガビジネスの根幹が揺らいでいた。だって、マンガを売っている書店員すら、コミック誌を読む人は少ないんだから」 一方で、出版社社員のCはこう語る。「雑誌が落ちてはいるが、『少年ジャンプ+』のような電子コミック誌の配信が昨年から活発になってきた。すでに10万人以上が登録している。マガジン系でも『週刊』『月刊』『ヤング』の3誌でサイマル配信を開始している。当然こちらの影響もあるだろう。だが、電子版のコミックス・コミック誌の売上を合わせると、コミック業界全体の売上は伸長している。雑誌が売れないからといって、コミック全体が悪いわけではない」
覚悟の決意表明も現場の反応はイマイチ!?
実は、サンデー新編集長の決意表明の話は、ネットでは盛り上がっていたが、出版社や書店などのリアルな現場では、イマイチ盛り上がっていない。 コミック出版社のDは「あえてそんなことを掲載しなくても良いのではないか。一方的に連載作品を入れ替えると、読者の意向を無視する可能性もある」と言葉少なに話した。 また、別の書店員のEは「あまり話題にはなっていない。『サンデー』は落ちるばかりなので、『これくらいやらないといけないだろう』と思った程度」、書店員のFは「(決意表明が)刺激的だったので、これから注目していきたい」と話す。 決意表明に対する賛否の意見はみな持っているが、総じてネットメディアほど話題になっていないのが“リアル”な反応なのだ。
苦しい出版業界にさらに追い打ちをかける消費税増税
コミック誌も含めて、出版界では雑誌全体の減少が頭痛の種となっている。出版物の輸送は、毎週・毎月と定期的に発売される雑誌が大量にあるからこそ、発売日が不確定な少部数の書籍を同梱して、安い経費で書店にまで運ぶこと可能となっている。『ジャンプ』や『マガジン』のような大部数の雑誌に、出版流通が支えられているといっても過言ではない。 その雑誌が、昨年の8%への消費増税によって、さらに部数が減少している。しかも、17年4月には10%への増税も予定されており、雑誌関係者はまた部数が急落するのではと危機感を募らせている。 『サンデー』新編集長の宣言の裏には、出版流通を大崩壊させるかもしれない危険な事態が潜んでいることも、ここで訴えておきたい。 (文責・佐伯雄大)