「サンデー」新編集長の決意表明にひそむ出版界の危機
3大少年コミック誌のひとつ、『週刊少年サンデー』(小学館)に掲載された新編集長の決意表明がネットメディアで話題になっている。今年7月に『ゲッサン』編集長だった市原武法氏が7年ぶりに古巣であるサンデー編集部に新編集長として復帰。8月19日に発売された同誌38号の中で、今秋以降に『サンデー』本誌や超増刊号の大改革が始まるとし、現状の連載作品の多くを終了させ、新人・若手作家の作品と入れ替えると表明した。さらに「少年サンデーの『漫画』に関わるすべての意思決定は編集長である僕がただ一人で行います。(中略)今後の少年サンデーの運命の責任は僕一人が背負うという覚悟の表明でもあります」と“独裁者宣言”までしてのけたのだ。 無料漫画アプリの台頭 ── それを支える重要な2つの要素とは?
「サンデー」新編集長の決意表明は背水の陣の表れか?
これを見たコミック出版社の編集者Aは語る。「一昔前なら大手コミック誌の編集長がこんなことを宣言するなんて考えられなかった。あえて読者に向かって大改革を訴えたのは、『サンデー』の部数が限界にきているからだろう。あれだけ高給取りの編集者を抱えていて、費用だけをみれば、いつ休刊してもおかしくない。今回の宣言は、まさに背水の陣を敷いての反撃の狼煙と受け止めた」 A氏が言う通り、『サンデー』ならびにコミック雑誌全体は壊滅的な状況にある。出版科学研究所によると、1990年代のコミック雑誌の売上は3000億円以上の規模を誇ったが、2014年には1313億円と半分以下に縮小してしまったのだ。 当然、その影響は人気コミック誌も免れない。『サンデー』の今年1~3月の平均印刷部数(実売部数はこれ以下)は39万3417部(日本雑誌協会)と40万部を割り込んだ。『週刊少年ジャンプ』は242万2500部、『週刊少年マガジン』は115万6059部と『サンデー』に比べると部数は多く見えるが、両誌とも逓減傾向にある。これは2015年も加速しており、15年上半期(1~6月)のコミック誌は前年同期比7.9%減(出版科学研究所調査)と、これまでにない落ち込み幅を記録。「NARUTO」などの人気作品の終了や映像化作品の不発などがその要因としており、市場縮小に歯止めがかからない。コミック編集者Bは言う。