AKB48に憧れていた少女がプロレスの道へ 山下実優が振り返る東京女子でのデビューと、人生初の「絶望」を感じた試合
――デビューまではどんな練習をしていたんですか? 山下: 2012年に上京して、リングデビューするまで約1年間、みっちり基礎を教えていただきました。当時活動していたのは、私を含めて3人。ずっとマットで練習していましたね。私たちは1期生で先輩がいないので、いろんなジャンルの先生に学びました。(2013年の1月に)初めてプレイベントが開催されたんですが、そこでやったのもマットプロレスでしたね。 ――そこから毎月のようにプレイベントを行ない、2013年8月17日、DDTプロレスの両国国技館大会のタッグマッチでデビューしました。 山下:そこで立ったリングは、マットとは別物でした。試合前はずっと泣いていて、すごく緊張していたのを覚えてます。試合の内容はまったく記憶にないんですよ。試合後、デビュー戦の映像で確認して「こんなことをやってたんだ」と。 空手もやっていたからか「戦うこと」に関しては、一緒にデビューしたほかの選手よりイメージできていたほうだと思います。でも、プロレスラーとして"魅せる"部分で納得がいかなかった。「本当に難しい」と感じましたね。 【初めて"絶望"を味わった戦い】 ――その"魅せる"ができるようになった、と感じたのはいつ頃ですか? 山下:けっこう時間がかかりました。周りの人からすれば、私が空手を習っていたことは強みに見えたでしょうけど、私のなかでは「空手で効く蹴り」と「プロレスで効く蹴り」はまったく別物。「お客さんを魅了できる蹴り」ができない葛藤がありました。 レスラーとして「こう魅せていこう」と明確に意識したのは、2017年8月26日に、後楽園でセンダイガールズの里村明衣子さんとシングルで対戦した時です。この日、人生で一番の"絶望"を味わいました。初めて試合中に「勝てないな」と感じたんです。空手の試合でメチャクチャ蹴られても、一度も感じたことがなかったのに......。