年金「月額23万円」預貯金「5000万円」で、さらに不動産もあるのに…67歳の妻が「お金に不自由」するようになってしまった「意外なワケ」
中堅商社に勤め、年金は投資や節税もきちんと行っていたため資産は十分、ローンも完済しているAさん夫婦。悠々自適の老後かと思っていましたが、思わぬ落とし穴がありました。その落とし穴とは──。 【マンガ】5200万円を相続した家族が青ざめた…税務署からの突然の“お知らせ” 前編記事<70歳の元商社マンで年金23万円、預貯金5000万円で不動産もあるのに…バラ色の老後のはずが、夫婦を待ち受けていた驚きの結末>に引き続き、夫が認知症になってしまい、成年後見人制度の手続きをしたものの自由に夫のお金を引き出すことができなくなってしまったBさん(67歳)の事例を解説します。
後見人がついてもBさんは自由に夫のお金を使えない
Bさんは、今までのように夫のお金を自由に使えなくなってしまいました。成年後見制度は本人の財産を守るための制度であり、日々の生活に必要な生活費は後見人を通じて出金してもらうことができました。 しかし、奥さんの旅行や趣味の費用について、これまで通り夫のお金で賄ってもらうことはできず、奥さんからすると「後見人がついても自由にお金が使えない」状況でした。 収益不動産も複数あるので、奥さんが「物件を1つ売却して、そのお金を私が使うことはできませんか?」と後見人に聞いても「それはできません」と言われます。 「夫が財産を築けたのは、私が家事をして子育てや主人の身の回りの世話をしたからですよ!」と伝えても「資産の名義はAさんですので、Aさんの資産になります」と暖簾に腕押しです。 これでは夫が亡くなり、相続しない限りは資産を自由にできません。「まさか、こんなことになるなんて…」財産はあるのに使えない状況など、Bさんは想像もしていませんでした。 認知症になると、株式や投資信託の有価証券、不動産、預貯金などの資産は凍結され自由に活用することができなくなってしまいます。認知症になった後ではどうしようもありません。今回の事例のようにAさん夫婦のような状況に陥らないために、事前の対策を行う必要があります。
任意後見制度とは
今回は3つの対策を解説します。 (1) 任意後見制度 任意後見制度とは、本人の判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ任意後見人を選んで契約を結んでおく制度です。本人の判断能力が低下したときに、家庭裁判所で任意後見監督人が選任され、その監督の下で任意後見人が本人の生活や療養看護、財産に関する事務を代行します。 任意後見制度のメリットとしては、次のような点が挙げられます。 (1)本人が支援してもらう相手(任意後見人)を自分で選ぶことができる (2)契約の内容について細かく決めることができ、成年後見よりも本人の意思を反映しやすい (3)成年後見であれば認められない資産運用についても、任意後見であれば認められる可能性がある 成年後見制度の場合は自宅の売却に家庭裁判所の許可が必要ですが、任意後見制度の場合は家庭裁判所の許可は不要です。 ただし、任意後見の契約締結には本人に契約内容を理解する判断能力が必要となるため、認知症を発症した後に契約を結ぶことは困難です。