年金「月額23万円」預貯金「5000万円」で、さらに不動産もあるのに…67歳の妻が「お金に不自由」するようになってしまった「意外なワケ」
家族信託とは
(2) 家族信託について 家族信託とは、財産を信頼できる家族や親族に託して管理や処分を任せる民事信託の一形態です。財産を託す人を「委託者」、財産の管理や運用をする人を「受託者」、託された財産から利益を受け取る人を「受益者」といいます。 家族信託には、次のようなメリットがあります。 (1)認知症による資産凍結を防ぐことができる (2)収益不動産や有価証券を有効に活用できる (3)遺言では指定できない次の相続についても指定できる (4)信託銀行等を受託者とする商事信託と異なり、家族から受託者を選ぶため信託報酬が不要 Aさんが認知症を発症する前であれば、Aさんの資産(収益物件や有価証券)を信託契約することでBさんに管理を任せることができます。そうすればAさんが認知症になったとしても外部の専門家に資産を管理してもらうことなく、BさんがAさんの資産の管理をすることができました。
生前贈与とは
(3) 生前贈与 生前贈与は、認知症による資産凍結を回避する効果があります。これまで述べてきた通り、認知症になると本人の財産を自由に管理、処分ができなくなります。そこで、認知症を発症する前に生前贈与をして財産を親族に渡しておけば資産を有効活用することができます。 認知症対策として生前贈与を行う場合には、次の点に注意しましょう。 (1)認知症を発症後は意思能力がないと判断されるため、認知症を発症した後の生前贈与は原則として無効になります。 (2)口約束で贈与契約書を作成していないと、内容を明確化できないため相続人同士のトラブルにつながります。 (3)生前贈与には贈与税がかかる場合があります。また贈与税には様々な控除や特例があるので、事前に専門家へ相談しましょう。 認知症対策とはいえ、多くの資産を事前に贈与したものの、その資産を贈与された親族が認知症になってしまうと元も子もありませんので気をつけてください。 Bさんは後になって上記の方法を知りました。 もし、Aさんの様子がおかしいと思い始めた時に対策をとっていればと悔やまれてしかたありません。 結局、Bさんは趣味を断念して慎ましい老後を送っています。 資産は充分にあっても、認知症や障がいにより物事を判断する能力を失ってしまうと、今回のAさん夫婦のように困った状況になりかねません。 先のことを見越して事前の情報収集と必要な対策をとっていきましょう。
武田 拓也