<甲子園交流試合・2020センバツ32校>注目選手紹介/下 野手編 夢舞台、ここぞで1本
10日から兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で行われる2020年甲子園高校野球交流試合(日本高校野球連盟主催、毎日新聞社、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)。中止となった今春のセンバツ出場32校が招待され、各1試合を戦う。球児あこがれの舞台が間近に迫った32チームから、注目の選手を紹介する。 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら ◇開幕戦、初回から振る 井上朋也(花咲徳栄・3年) 181センチ、88キロの堂々とした体格。7月7日の練習試合で高校通算48本目となる本塁打を放った右のスラッガーは「実戦のスピードにも慣れてきて良い感じ。ホームランを打つに越したことはないので、甲子園でも打ちたい」と手応えを口にする。岩井隆監督の「成長してほしい」との期待通り、昨年12月から主将も任され視野が広くなった。「強く言うだけでは、周りは動いてくれない。まずは自分が先頭に立って行動しないと」 甲子園は3度目の出場。1年夏は1回戦の鳴門(徳島)戦、八回に逆転適時二塁打を放って勝利の立役者になった。だが4番に座った2年の夏は、中森俊介投手を擁する明石商(兵庫)に競り負けた。悔しさをバネに打撃を磨き、昨秋の公式戦8試合で11打点、打率3割6分と成果を出した。ここ一番の集中力と勝負強さには定評がある。 コロナ禍で自主練習が続いたが「自分のことに集中できる」と前向きに捉え、苦手だったインコースの球を打てるように特訓。花咲徳栄出身で、2学年上の日本ハム・野村佑希が憧れの存在だ。 交流試合は注目を集める開幕戦になった。「初回から振っていけたら。スタートにふさわしい試合をしたい」と意気込む。【藤井朋子】 ◇右の大砲、安定度高く 西川僚祐(東海大相模・3年) 出場選手を代表する「右の強打者」と呼んでも差し支えないだろう。中学時代、東京ドームでの全日本中学野球選手権ジャイアンツカップ決勝で逆方向に本塁打を放り込み、にわかに注目された逸材だ。身長186センチの体格を生かし、高校でも順調に成長している。 力任せに引っ張ろうとしない打撃は秀逸だ。意識するのはあくまで「右中間への打球」。大振りしない分、安定度が高く、昨秋は公式戦9試合で打率5割2分9厘。4本塁打、17打点と長打力を発揮した。 コロナ禍で練習内容が制限された時期も、努力を怠らなかった。自主的に筋力トレーニングに励み、さらなるパワーアップにも成功した。 門馬敬治監督の指導で、あえて木製バットでの打撃にも取り組んでいる。まだ完全に対応しきれているわけではないが、差し込まれないように、従来よりも打つポイントを前に置くなど進化が始まっているようだ。 一度は、最終学年で戦うことを諦めた甲子園に、間もなく足を踏み入れる。「もちろん勝ちにこだわる。その上で夏の甲子園で1本、ホームランを打ちたい」と目を輝かせている。【岸本悠】 ◇出塁、つなぐ野球体現 来田涼斗(明石商・3年) 入学直後からリードオフマンを任され、甲子園で通算3本塁打と長打力も兼ね備える。昨春のセンバツ準々決勝では先頭打者本塁打とサヨナラ本塁打を同一試合でマークし、狭間善徳監督も「持っている」と絶賛。記録にも記憶にも残る一打を放った左打者だ。 打席に向かう際に独特のルーティンを持つ。屈伸して両脚を1回ずつ蹴り上げ、打席内で体を後ろに大きく反らせてから構える。「よりバットを強く振れるように」との思いからだ。 前に体が突っ込む悪癖を修正するために、目を閉じてバットを振るなど、一度打撃フォームを壊してから再構築を図った。その結果、右肩を開かないようにすることで「タイミングの取り方が変わってきた」と手応えをつかんだ。7月24日の兵庫独自大会初戦で4打席全てで出塁し2安打1打点。追い込まれてからはノーステップ打法を取り入れるなど、明石商のつなぐ野球を体現するため、出塁を第一に考える。 甲子園は「思った以上のプレーができる、自分を成長させてくれる場所」と感じている。主将で迎える最後の舞台。「チームの先頭に立って、引っ張っていくことがやるべきこと」と、勝利に貢献するプレーを誓う。【藤田健志】 ……………………………………………………………………………………………………… 甲子園高校野球交流試合に出場する注目の選手たちを、毎日新聞ニュースサイトなどが運営する「センバツLIVE!」で紹介しています。