【一問一答】新ロシア大使を直撃!
■“敵対的な態度の撤去”しない限り、日本との「対話はない」
──プーチン大統領は2000年に大統領として初めて来日し、1956年の日ソ共同宣言の有効性を認めると話した。歯舞・色丹の2島は平和条約締結後に日本に返還される56年宣言を出発点と再確認し議論が始まった。それから20年以上で状況が変わった。2016年にプーチン大統領にインタビューした際は、「領土問題は存在しない」と。返還した北方領土に米軍基地がつくられるかどうかも気にしていた。ロシア政府としては、領土の返還は米軍の基地が置かれないことが前提になるのか? 戦後すぐ締結される平和条約という文書だが、80年という長い月日がたっている今、全く同じような条約について議論すること自体が現実を無視することだと思う。 だから、ここ数年ロシアとしては平和条約ではなく友好平和そして協力といった包括的な文書について、日本側と積極的に交渉を続けた。ただ今の状況においては、岸田政権はロシアに対して「戦略的敗北」を正式に実施しており、そういう環境のなかで極めて重要な文書について議論するということは残念だが不可能だと思う。 ──過去の宣言は、効力がなくなっているのか? ロシアとしては、もともと過去ではなく未来の方向へ新しい関係を作るという希望があったと思う。そういった立場で議論してきたが、今の状況のなかでは議論の内容について意見することは難しく思う。 ──プーチン大統領も平和条約交渉について「今は条件が整っていない」と発言しているが? プーチン大統領の発言は、今の状況のなかで二国間関係において極めて重要な問題について議論すること自体難しく思う。 ──今後、岸田首相や上川外相と対話の可能性は? 大使館なので日本側といろいろ接触はあると思うが、今のところ、高い政治レベルの会話は止まっている。おそらく、これからも続くのではないかと思う。ただ、もちろん具体的な分野に関する関心事項があり、それをテーマにこれからも意見交換して限られた形であっても協力していく。 ──今の日本に期待することは? 極めて難しい状況のなかで一番重要な課題は関係を安定させることだと思う。さらに悪化させないということで、岸田政権の行動次第だと思う。 ──経済制裁が一番大きい? 二国間関係において一番重要なのは、敵対的な態度の撤去だと思う。岸田政権は今でも非友好的な路線を続け、その環境のなかでは対話の再開の可能性はまずないと思う。 ──民間のつながりはできるか? 今まで大使館は、文化交流の分野ではいろいろ努力してきたと思う。毎年行われるロシアの文化フェスティバルなど数多くのイベントを予定している。文化交流だけではなく、学生交流やスポーツにおける交流など、新しい可能性ができれば良いと思う。