なぜプーチンは長期政権を維持できるのか...意外にも、ロシア国内で人気が落ちない「3つの理由」
政治的権威のバックに宗教的権威を見せる
ロシアの政治には、人権意識の低さも指摘されています。統一ロシアは西側諸国のような市場経済をある程度支持している一方、言論弾圧やメディアへの規制が強く、2013年にはLGBTQであると表明することを禁じる「ゲイ・プロパガンダ禁止法」が成立。 2023年には「性的マイノリティの自由と権利を求める運動? そんな奴らは過激派だ」とし、ロシア国内での活動を禁じています。多様性の時代、「古き良き家族主義に回帰しよう」と訴えているのです。 <権威主義ロシアである理由3 :「ロシア正教会」の影響> 3つ目の理由は、ロシア正教会の存在です。 ロマノフ朝の帝政時代から、ロシアでは皇帝は正教会を権威付けに使ってきました。ローマ・カトリックと違い、国ごとに正教会が分かれているため、国の政治的権力と結びつきやすかったのです。 プーチン大統領も、正教会と密接な関係を築くことで、自らの権力基盤を強固にしてきています。政治的権威のバックに宗教的権威をも見せることで、権威主義的な政治がより強化されているのです。
ポスト・プーチンはどうなる?
社会主義の時代から教育費が無償だったこともあり、ロシアの人々の知的レベルは平均的にかなり高い。国の強力な支援によってスポーツでも研究でも飛び抜けて優秀な人が育っており、学問も盛んでした。米国に続き核兵器開発には成功。 宇宙開発は近年まで世界を先導してきました(ウクライナ侵攻で他国がロシアとの宇宙開発の協力から手を引くといった悪影響が出ているようです)。このところ医療については後塵を拝していますが、ソ連・共産党時代に開発したポリオワクチンは、日本でも使われていたほどでした。 バレエや音楽を学ぶためにロシア留学する人は今も世界中にいて、ショパンコンクールで2位になった反田恭平さんもその一人。ロシアという国そのものは、教育・科学・芸術といった面ではマイナスばかりでないことは指摘しておかねばなりません。 このように「ロシア国民のポテンシャルは高い」と言うと、しばしば「じゃあ、新たなリーダーが現れたら国は180度変わるのか?」という質問を受けます。ロシア専門家ではない個人の意見としてですが、「それは難しい」というのが私の答えです。 抑圧への国民の反発がありながら長期政権を維持してきた背景には、前述した「強権的なリーダーを求める3つの理由」があります。 また、広大で多数の民族を抱え多くの仮想敵国を周辺に持つロシアという国は、「強権的なリーダーでないと統治できない可能性の高い不安定な国」です。 そしてロシアの人々には「こんな国は嫌だ」という不満と同じくらい、「強いリーダーが欲しい」という期待もあるのですから、長期政権は崩壊しにくいでしょう。 今後新たに、ナワリヌイ氏のような人物が登場したとしても、法の支配が機能しない以上、命か自由のどちらかを奪われて封じ込められてしまいます。 しかし人間には寿命があり、1952年生まれのプーチン大統領は70歳を超えています。 「後任によっては変わるのでは? 新たな政党が現れるのでは?」 そんな期待をしつつも、私は「別の政党・別の大統領になっても、またその党・その人の強権政治となり、西側と距離をおく可能性が非常に高い」と感じています。 ロシアと西側諸国では、イデオロギー、価値観、文化的な違いが大きくあります。西側の民主主義的なものが浸透するのはそう簡単ではないでしょう。プーチン政権が倒れても、〝第2、第3のプーチン政権〞が誕生する可能性が高いということです。