なぜプーチンは長期政権を維持できるのか...意外にも、ロシア国内で人気が落ちない「3つの理由」
「法の支配」の代わりに「パワーの支配」が幅を利かせている
<権威主義ロシアである理由2:古代ローマのDNA欠如> ロシアが権威主義である理由の2つ目は、古代ローマから西欧では続くDNA欠如――すなわち、西洋的な「法の支配」の概念が十分でないためだという仮説を私は持っています。 ロシアや中国のような権威主義国家は、司法の独立性が保たれていません。民主主義の大原則である「法の支配」が機能していない代わりに、権威主義的な政党やリーダーという「パワーの支配」が幅を利かせているのです。 「ヨーロッパの礎はキリスト教と古代ギリシア・ローマ」と言われるなかで、古代ギリシアが文化や芸術、哲学の礎であるなら、古代ローマは法や実学の礎です。 法を整備し、道路や水路などインフラを建設した先進性が古代ローマの傑出した点であり、そのDNAはかつて古代ローマ帝国だった西ヨーロッパの国々に脈々と受け継がれています。 ところが地理的理由から、ロシアは古代ローマの支配を受けませんでした。法やルールが機能しない社会では、公平性が損なわれます。古代ローマ時代とは直接は関係ないのですが、ロシアの農奴制は、制度自体は19世紀に廃止されたものの、事実上は20世紀まで残っていました。 人間を売り買いするなど、人権蹂躙どころの話ではありません。 ロシアの圧政下の苦悩や身分の違いから生じる軋轢が、人々の思索を深め、感性を研ぎ澄まし、優れた芸術や哲学・思想を生んだ──これは一面の事実ですが、作品に昇華できたのは限られた人々。一般的な人々は支配者に長い間抑圧されると、無気力になり、諦めてしまいます。 「自分は偉い人の言うことを聞く側だ」と刷り込まれる可能性もあります。 そこに強いリーダーを求める背景が合わさって、近代になっても共産党の一党支配による権威主義を受け入れ、現在は統一ロシア、そしてプーチン大統領の強権的な支配を受け入れている......。負の連鎖となっています。